SS置き場

□接近
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1.

「校門のとこ見て!すっごくカッコいい人が立ってる〜。」

時刻は正午過ぎ。
楽しいお弁当タイムで教室は賑わいの真っ最中だ。
数名の女子生徒が興奮した面持ちで校門のほうに視線を送っている。

俺は別段気にも止めず、友人たちと語らいながらお弁当を食べていた。

「でさ〜、それが怖いってのなんの!!
夜な夜な現れては生け贄を探してるらしいぜ。
寒いなー!」

すっかり秋らしくなった為、
冷たい風が背筋を余計寒くする。
西村がまた、よた話しを始めていた。

「お前そういう話し好きだよな〜。なぁ夏目。」

「え、あぁそうだな。」

北本から突然話を振られて生返事を返す。

「夏目聞いてた?
 ぼぉっとしてさ。」

じと目を向けられ、慌てて弁解する。

「悪かったよ。
 でもちゃんと聞いてたぞ。
 それって噂なのか?」

「まぁな。隣のクラスの子が話してたんだよ。
 違う学校の友達から聞いたらしいぞ。
 塾の帰りに変なものに追っかけられたってさ。」

「で、何で生け贄になるんだよ。」

興味津々といった風な北本。
自分も思わず身を乗り出す。
西村は回りをキョロキョロ見渡し、顔を近づけ小声で話し出す。

「それがな…。
“血を捧げよ我に”って言って追っかけてきたらしい。」

おおーこえー!と大袈裟に身を震わせて見せる。

「まじかよ!?」

半信半疑な北本。うさんくさーと呆れ顔になった。

「まじだって!!」

信じてもらえなかったのが悔しかったのかムキになって
拗ねてしまう。
そんな二人とは対称的に彼は顔を曇らせた。
その表情の変化に気付いた彼らは言い合いを止めて問いかける。

「おっ夏目怖いか??」

「そっ、そんなんじゃないよ。」

慌てて否定するが返ってきたのは、意外な言葉。

「別に否定しなくていいぜっ。
何か悪いな、変なこと言ってさ。
夏目ってそういうことに敏感そうだよなぁ。」

なぁ、と2人は頷きあう。

「そんなことはないけど。 」

複雑そうな表情の彼の肩をポンッと叩き、笑顔を見せる西村。

「まっ、噂は噂。 気にすんなって。
でもさ夏でもないのにこんな話しが出るなんてなぁ。 」


―――ビーッ!

午後が始まる合図が鳴った。

「あーあ昼休み終わりか〜。眠いな。」

「本当に!」

友人二人は呑気に欠伸をして、席に戻って行った。

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