SS置き場

□不器用な大人
1ページ/1ページ


別に君を傷付けたいわけじゃない。

別に君を怖がらせたいわけじゃない。

別に君を悲しませたいわけじゃない。


だからどうか――。



<不器用な大人>



今日も君はあやかしと関わっていた。

危険な目に遭って欲しくないと思っているのに。

君は相変わらず妖怪贔屓で少し嫉妬する。

私にとっても、君にとっても決して良い存在ではないというのに。

それなのに君は妖怪の為に傷付き、悲しみ、涙を流す。

私は妖怪を憎んでいる。

だが君は妖怪を愛している。

君に愛されるものは幸せだ。

人と妖怪とを完全に線引きする私と、そうじゃない君。

ついキツイことを言ってしまう。

そして傷付けてしまう。

私は俳優である。

故に演じることが出来る。

だが君の前では演じることが出来ない。

気の利いた台詞も言えないなんて。

器用に立ち回って生きてきたつもりなのに、なんとも可笑しなことよ。


君はあやかしをみることが出来る、同じ世界が見える、大切な存在。


だからどうか――


心を見せてくれ。

心に触れさせてくれ。

今度晴れた日に海にでも誘おうか。

そしてゆっくり語ろう。

私のことも君のことも。

fin.



お話TOP

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ