かのこ本

□熱中症
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「熱中症1」




あともう少しこのままでいたい。



好きな人の温もりを感じていたいと
思うことは決して可笑しいこと
ではないと思う。



男なら誰しも抱く感情。



俺もその中の一人。



今まで抱いたことのない想いを

戸惑いながらも受け入れることが

出来た俺は幸せ者かもしれない。



彼女が笑うたび、怒るたびに

色鮮やかに浮かび上がる世界。



小さなことが、些細なことが

とても嬉しい。



ああだから早くこの想いが届きますように。



だけど時々考えてしまう。



このまま想いが彼女に伝わらなかったら??



このままずるずる俺だけ想いを重ねて

叶わなかったら??



そしてそのまま思いもよらない相手に

彼女を絡みとられたら??



くだらない感情を持て余す。



だからこの時、誰よりも彼女に近い存在だと

自分にいい聞かす為にさせた膝枕。



必死に走った甲斐があったというものだ。



止め処なく溢れる気持ちをどうか静めて欲しい。



祈るように俺は身を委ねる。



柔らかな太ももと彼女から

ほのかに香る匂いに

俺は全神経を集中させ

それをじっくりと堪能する。



規則正しく刻まれる鼓動に

やがてうつらうつらと

まどろみ始めた椿。



だがその意識を一気に覚醒させる出来事に

心臓が大きく跳ねた。





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