かのこ本

□好事魔多し
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さめ様に捧げる予定だったお話w
でも上手くいかずに没った話(汗)
救済します!!ていうかすみません…;



「好事魔多し1」

「桃ちゃん、夏草君
 来てくれてありがとう!! 」


かのこは満面の笑みで二人を迎えた。


「もちろんだよ、かのちゃん。
 すっごく楽しみにしてたんだからっ。」


「よう苗床、元気してっか?
 俺もすげー楽しみだったんだぜ。」


桃香も夏草もとても楽しそうで
かのこのテンションも一気に上がる。


「かのちゃん可愛いね
 すごく似合ってるよ。 」


「ホントだな。
 苗床最近また可愛くなった?」


いつもと違うかのこの
出で立ちがとても新鮮だ。

口々に称賛され戸惑うかのこ。

他の人に言われても何とも思わないが、
仲の良い友達から言われると
柄にも無く恥ずかしくなってしまう。


「なっ!誉めても何も出ないよ!?
 二人してどしたのさ?」


ちょっと照れ臭そうに笑うかのこの
滅多に見れない表情に、桃香も夏草も
思わず笑みがこぼれた。



今日は宝校の一学期最大のイベント
「宝校夏祭り」が開催されている。

憂鬱な期末テストの後、
夏休み前にご褒美として
毎年慣例となっているものだ。

毎回一年生が模擬店を
催すことになっている。

上級生たちとの親睦を深める為
などと言われているが…。

という訳で時間が無い中
かのこたちのクラスも
模擬店を出している。



メイド喫茶もとい、「浴衣喫茶」


クラス全員が浴衣でおもてなし。

夏っぽいのが良いなんて単純な理由で
一年G組は全員浴衣を
着ることになったのだ。

中庭の一角で大きなテントを張り
その下でお店を出している。

和っぽい雰囲気を出す為に
背もたれの無いソファーに
赤い毛氈が掛けられ
ちょっとした“茶屋”のようだ。

風鈴の涼やかな音色も響き、
なかなかの風情がある。

一番人気で先ほどから大忙し。

そんな訳でかのこも
もれなく浴衣を着ている。

白地に赤い朝顔の絵柄が映えて
とても可愛い。


深紅の帯を締め、
下駄の鼻緒も同じ色で合わせている。


「ああ〜!可愛い!!かのちゃん良いなあ。」


相変わらず桃香は絶賛の嵐で
本当に照れるかのこ。

天使と崇めている大親友の
桃香から言われると
それだけでかのこはとても嬉しい。

朝からの面倒な準備も
まあいいかと思えてくる。


「あ、ありがとう。
 お母さんに家にある浴衣送って、
 って言ったらさ、新しいの買って
 送ってくれたんだ。 」


「優しいお母さんだね〜。」


「あぁそうだなっ。」


口々に言う二人にかのこは
ちょっと苦笑する。


「お母さんがなぜかやたら
 喜んでたんだよね〜。
 かのちゃんが珍しく
 浴衣着るなんてー!みたいな。
 写真送って♪とか言われちゃったし…。」


あはは、と乾いた笑いを出すかのこ。


「浴衣着るって結構特別だよ?」


「まぁそうだよねぇ。
 久しく浴衣着てなかったから
 着るの本当に大変だったんだよねぇ…。
 しかも動きにくいし…。」


袖や裾を少し引っ張って
げんなりするかのこ。


「でもすっごく似合ってるからね、
 かのちゃん。」


「苗床可愛いぞ!!!」


天然&王子キャラ二人に
気圧され気味のかのこ。


「あ、ありがとう。
 そこまで言われたら、ね。」


だんだんこそばゆくなってきたかのこは
話題を変えようとした。


「あっ、そうだ!何か飲む?
 かき氷とかもあるよ。」


「そういえば喉渇いたね。
 かき氷食べたいかも。」


「俺もーー!!いちごシロップ
 たっぷりでw」


「甘っ!!いいけど。
 桃ちゃんはどうする?」


「私もいちごが好きだな。」


夏草は一瞬ドキッとして
息を吐く。



“好き”という言葉に異常に反応するのは
桃香を好きなので仕方ないのだが、
間近で見ているとやはり
面白いと思うかのこ。

毎日この恋愛模様が
見られていたときが懐かしいと思う。

でも高校生になり傍観することを止めた。

二人の友達として
これからの展開に期待したいと思った。



「二人ともいちごね。
 ちょっと待ってて―「苗床!!」


意気揚々と言い掛けた言葉に被さる声。

後ろを振り向くと不機嫌な椿が立っていた。

藍色の男物の浴衣を風流に着こなす椿。



「椿君どしたのさ。」



(何か機嫌悪い?!)



「……さぼってねえで手伝え!!」



勢いよくかのこの頭を掴むと
目線を合わせる為に腰を折り
威圧的に告げる。



「さっさと仕事しねえと後でおしおきな。」



(ひぇーーーーー!!!!
 怖いっ、てか何で?!)



腰が若干引き気味になる。

不機嫌マックスの理由が分からないが
かのこは仕方なくコクリと頷く。

それにとりあえず満足したのか
椿はにやりと笑って離れた。

かのこは機を逃すまいと
「用意してくるから待ってて!」と
二人に告げ、足早に奥に駆けて行く。


「椿君ひどい。」


その様子を一部始終見ていた二人は呟く。


「そうだよ椿、
 せっかく話してたのにさーー。」


そんな桃香と夏草を胡乱な瞳で見やると
はあーーと溜息を零した。


「こっちはめちゃめちゃ忙しいんだよ。
 それに・・・。」


うんざりするように視線を
テントの外に向ければ、
山のような人だかり。

先ほどまでかのこと話をしていて
気がつかなかったが見れば女子の山。


きゃーきゃーと黄色い声が聞こえ
携帯を片手に、勝手に写メる
モラルが欠如した者たち。

鬱陶しいことこの上ない。

二人はその様子を唖然と見ていた。


「す、すごいね…。」


「ああ、すげーーー。」


さすがの椿もげんなりしていた。


「朝からピーピー煩くて煩くて。
 本当にいい加減にしろって感じだ。」


「確かにそうだね。これはちょっと…。」


「椿、ご愁傷様だな…。」


「殴るぞ夏草…。」


低く唸るように言えば青ざめ一歩下がる。

怒らせれば怖いと分かっているので
「すまん!」と素直に謝る。

ふん、と鼻で笑うといつもの椿に戻った。


「これ着てる所為だろうから
 これが終われば早々に着替える。」


あと30分もすれば
午前の担当者は役目を終えられる。

午後からはフリーでお祭を満喫する
約束を四人はしていたのだ。


「すごいな浴衣効果。
 中学の時もしたけどなーコスプレ?
 あの時とは違うな。」


「そうだねー、懐かしいなー。
 かのちゃん可愛かったし。」


目を細めて言う桃香に
椿は複雑な表情を向ける。


「ああそうだな!苗床可愛かったよな!」


笑顔で無邪気に言う夏草に
今度こそ椿は拳を振るった。







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