かのこ本

□勘違い
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「勘違い1」


100パーねぇよ!!とハモったのはいつの日か。

そんなに前の話しではない気がする。

椿君と私が付き合うとか本当にナイナイ!!

というか私を恋愛対象に見るなんて超常現象でしょ。



だって私は苗床かのこなんだよ!?


だからどうした!?って言われそうだけどさ。


最近高校でも誰かさんのお陰で
なんちゃって自称美人ギャルによく絡まれる。


だから私は王様に従う平民なんだよ!!

モブキャラなんだよ。


「センターは彼に一任させて頂きますとも。」


「誰に?」


「彼に…って椿君!?」

ベタに眼鏡がずり落ちそうに成る程驚く。

いつの間にか隣にいた。

科学の実験の為に移動教室に向かう廊下で
私ったらまたブツブツ言っていたようだ。

と言うか何だかやたら不機嫌な椿君の顔。

嫌な汗が背を伝う気がした。


ヒィィ怖い!!


平民は王様に弱いんだよっ、
そして平民は王様に簡単にやられちまうんだよっ!

何やら嫌な予感がして
咄嗟に背を向けて脱兎のごとく駆ける。


「おい待て!!」


低く怒った時に出る声。

待てと言われて待つバカはいないよっ。


違うクラスの生徒たちが何事かと驚く様に見ている。


あぁ目立ちたくないのにぃ(泣)


とりあえずあの階段を駆け上れば実験室だ。


角を曲がり一気に駆け上がる。



だが距離はもうそこまで縮まっていて
あと一息で手が届くところまで追いついて来ている。



逃げ切りたいが体力の限界。



足が縺れて来ていた。



「おい!いい加減に――。」



苛立った椿君の声が聞こえる。



グラッ



あれ?



視界が若干傾いて来てる?!



少しの浮遊感と重力を感じる。



「苗床?!危ない!!」



椿君の切羽詰まったような声が聞こえた。



うわあああ!!!!!



心の中で叫ぶ。



これからめちゃめちゃ痛いであろう現実を

思い描いて、目を瞑った。



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