かのこ本

□恋の病
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(恋の病)


いつも、いつも、気になって、

……気になって。

だから俺はどんなに遠くても会いに行っていた。

あいつの澄ました強い表情を見るのが好きで

そして、たまに見せる笑顔に惹かれた。

いつの間にか追い掛けていた。

俺はいつも勝手に誰かに追い掛けられていた。

だが俺は誰かを追いかけたことはなかった。


これは初恋。


長期戦必至の神経戦だ。




「椿くんどうしたのさ?
 一人難しそうな顔して。」

「別に。何もない。」

「ああっ!!!!」

いきなり雄叫びを上げたかと思えば、一気に捲し立てる。 

「あえて困ったような、難しいような顔して
 悩める美少年を演出して、
 また新しい旗を掲げようとしてるのね?!
 恐ろしい!!なんていうことなの?!」

自転車置き場で意味不明なことを叫ぶこいつ。

周りの視線が集まる。

当の本人は全く気付いてないが。

「何、分からねぇこと言ってんだ。」

相変わらず面白い。

思わず笑みが零れる。

「何笑ってんの?!椿くんってば!!ねえ!!」

「あははは。」

「いつまで笑ってんのさ!もうっ。」

柔らかい頬をぷぅっと膨らませて拗ねるこいつも可愛い。

というか俺は色々と重症のようだ。

「悪い悪い。」

あまりの可笑しさに若干涙目になりながら頭をぽんぽん叩く。

「ちょ!?バカにしてんの?椿くんいつも頭叩くけどさ…子供扱い?」

椿は身長がとても高い。

だからかのこは自然と上目遣いで見上げる格好になる。

眼鏡越しのくりっとした大きな目が椿を捉える。

今は俺だけを見ている。

こいつの喜怒哀楽全てが俺のものになればいいのに、

なんて呆れたことを考える。



自分は相当重症だと思う。



でもやっぱり独占したい気持ちは否定出来ない。



「椿くん急に黙り込んでどうしたの?」


少し不安の色が瞳に混じる。

前はこんな気遣いとかできる奴じゃなかったのに。

少しずつ、少しずつ、俺の存在が大きくなっていると思う。

それに機嫌を良くする俺も現金な奴だと思うが…。

瞳を覗き込むようにして少し、いたずらっぽい笑みを浮かべる。


「かのこちゃんは子供扱いされるのが嫌なのか。
 だったら大人扱いしようか?」

頤をさっと掴み上を向かせる。

秀麗な顔立ちが間近に迫る。

何となく意味も分からずに危険を察知したかのこは
バッと後ろに下がり間合いを取った。。

「つ、椿くん私が悪かったよ!!
 だから勘弁!子供扱いでいいです、
 そんで旗とか変なこと言ってごめん!!」

涙目で本気に怯えているところが若干ムカつくが仕方ない。

「悪いと思うなら償ってもらおうか。」

畳み掛けるように追い詰める。

「ひっ!?償い!?何でそんな大層な話になってんの?」

喚くかのこを尻目にシラッと言ってのける椿。

「謝って済むと思うなんて甘い。今週の日曜日時間空けとけ。」

「へっ!?」

大きな目を更に見開いて驚く。

「いいから空けとけよ。」

目で圧力を掛ける。

かのこは若干腑に落ちないが、

これ以上何を言っても聞き入れて貰えないで

あろうことが分かっている。

戸惑いがちに同意する。


「う、うん。分かった。そうする。」


その様子に満足した椿は綺麗な笑顔を見せる。


だがその笑顔は魔界への誘いにしか見えない。


かのこは頭を垂れた。




END


椿くんやったね!!!
かのこちゃんにデートの約束を取り付けられて!
椿くんは王様だから強引に庶民をひれ伏させるんだわ。←オイッ
何か尻切れとんぼですが許してw
かのこちゃんは椿くんだけに弱いと萌える!!!!!

次はなんちゃってカップルデート話を書こうw

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