nodame
□いつもの中華屋で
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「うわ、あっつーい。
ねぇ、ヤス。日本って、春でもこんなに暑いわけ?」
空港に降り立ち、建物の外に出た瞬間、ターニャがびっくりしたように言った。
「たまたまだよ。
今日は、夏日和らしい。」
「フランスでも夏は、十分に暑いのに、日本は春でも夏の陽気なんて。頭おかしいんじゃない?」
全く誰に言っているのか。
化粧が落ちるとかなんとか隣で騒ぎだした。早くタクシーをつかまえて涼しいところへ避難しよう。
「ねぇ、ヤス。
どこに行くの?」
窓から見える東京タワーを面白そうに見上げながら、聞いた。
「エッフェル塔よりモダニズムね。」
ターニャは振り返って笑った。
「東京タワーのほうが新しく建てられたからね。
そういえば、ターニャ、中華いけるっけ?」
「ユンロンの作ったの食べたことあるけど、マーボウトウフ?だったかしら。あれは無理だわ。辛すぎよ。」
あれには参ったという顔をして首を横に振った。
「ところで、どこに向かってるの?」
ターニャは再び、東京タワーを眺めながら言った。
太陽の光でターニャの金髪が輝く。
キラキラと眩しい。
僕はそっと手を伸ばして、スッと梳いた。
「昔のオケのメンバーに会いにいこうかなって。ターニャを紹介しに。
待ち合わせ場所がさ、中華料理屋なんだ。」