+Novel+
□お泊まり会
2ページ/5ページ
今回のお泊まり会は特に今までと変わったことはなくて、みんながあたしの夕食に付き合ってくれて、食後はこれまたみんなで一緒に最近流行りのテレビドラマを見た。
その後はみんな好きなことを好きなようにしていて、あたしはと言えばアリスに捕らわれて、散々髪をいじられた。
「アリス!あたしは人形じゃないのよ!」
「だって、ベラの髪すっごく綺麗なんだもの。こんな髪を前にして、あたしがじっとしていられると思う?」
………思わない。
それから2時間経って、ようやくアリスはあたしを解放してくれた。その間、エドワードはジャスパーと一緒にトランプをしていた。
ブラックジャックなんかして、ジャスパーは果たしてエドワードに勝てるんだろうか。
お風呂を済ませて廊下に出ると、エドワードが壁に寄り掛かってあたしを待っていた。
―――天使の彫刻みたいな美しさ。
思わず見とれてしまっていると、エドワードがあたしの視線に気付いて微笑んだ。
「気持ち良かった?」
「え…えぇ。ありがとう」
「行こうか」
あたしが頷くと、エドワードはあたしをお姫様抱っこするように抱えあげ、人間には到底真似出来そうにない速さで自室まで移動した。
「…エドワード……何を急いでるの?」
ふと浮かんだ疑問を素直に口に出してみる。
エドワードは質問には答えないで、あたしをソファに座らせた。
「ねぇ、エドワード。質問に答えて」
けれどエドワードは完璧に自分の考えに集中していて、あたしの声なんか聞えてない感じ。
―――何よ馬鹿にして!そっちがそうなら、こっちだって!
暫くしてから、エドワードは口を開いた。
「ベラ」
「………」
「…ベラ」
「………」
「……ベラ」
「………」
「…ベラ?」
「………」
「…ベラ、なんで黙ったままなんだ?」
「………」
あたしは答えない。そっちがあたしの話を無視するなら、あたしだって無視するまでよ!
「…ベラ…聞いているんだろう?」
「………」
エドワードが鋭く息を吐く。
あたしは唇を固く結んでエドワードの瞳をみないようにした。
―――うっかり見てしまえば、やられてしまうのは目に見えていたから。
そうこうしているうちに、かなりの時間が経ってしまった。
エドワードはあたしが根負けするのを待っているし、あたしは負けてたまるかと意地を通す。
拷問に近いほどの時間が経過したと思ったその時…
―――とうとうエドワードが折れた。
「分かったよベラ、僕の負けだ。謝るからどうかこっちを向いてくれ」
声には反省の色が滲んでいたけど、すぐに気を許すのも癪に触るから、ちょっとだけからかってみる。
「いいのよ、無理しなくて。あたしの話なんてあなたにとって聞くに値しないものなんだろうし」
「そんな訳ないだろ?」
「どうだか?現にさっき話聞いてなかったじゃない」
「…それは謝っただろ、ベラ」
「…だから無理しなくていいのよ?」
これじゃ、可愛くないただの馬鹿な女だ。きっとエドワードも呆れてる。
「………意地っ張り」
―――………!
やっぱり呆れてる…あたしは顔が熱くなるのを感じた。
そんなあたしを見て、エドワードは小さく笑った。
「ベラ、また顔が赤いよ?さっきからどうしたの?」
くすくすと忍び笑いをするエドワード。
「……そんなに僕が好き?」
「何言ってんのよ!調子に乗るのも………」
―――いい加減にして、と最後まで言えなくなってしまった。
瞳を見てしまったから。
バタースコッチ色の瞳は熱を持つかのように潤んでいて、あたしの瞳を覗き込んでくる。
―――この瞳には、絶対に勝てない。
あたしは潔く負けを認めるしかなかった。
「………分かったわよ許すわよ!許してあげる!」
「良かった」
あたしの降参発言に、エドワードはニンマリと微笑んだ。
「………で、何の話だっけ?」
負けを認めたからにはそれなりにはっきりさせるのがあたしの主義。
「ん?あぁ、そうだった…忘れてたよ」
くすっと笑うエドワード。
さっきから思ってたんだけど、今日のエドワードってよく笑う。
なんだか機嫌がすこぶる良い。
「さっきの…車でのことなんだ」
その言葉を聞いてあたしの顔はまたしてもゆでだこみたいに赤く染まる。
「………な…なにっ?」
否応でもさっきのことを思い出してしまう。
突然の…激しいキス。
思い出したことで、また心臓が走り出す。
エドワードに聞こえてしまいそう。
「びっくりしたよね?ごめん…」
「………は?」
全く予想だにしなかったエドワードの謝罪。
なんで謝られるのか全然わかんないんですけど。
「…嫌じゃなかった?」
「嫌って…何が」
「さっきのキス」
「びっくりはしたけど、嫌なんてこれっぽっちも思ってないわよ」
「本当に?」
―――一体何が言いたいの?
「どうしたの?はっきり言ってよ!」
今日のエドワードはどこかおかしい。
さっきのキスに始まって、異様に急いてる感じとか、よく笑ったりすることも。
暫くエドワードは黙っていたけど、何かを決心したように顔をあげた。
その瞳は真剣そのものだった。
TO BE CONTINUDE