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□とっておきの治療薬
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週末は晴れるとアリスが言っていたから、あたしたちは久しぶりにあの草原に行くことにした。

けれど、当日になって起きてみたら凄く身体が重かった。
それに少し熱っぽい。
エドワードがうるさいほど心配してきたから熱を測ってみたら―――37.8℃…

あたしはそのままベッドで休むことを余儀なくされた。









とっておきの治療薬










おでこにぺったり張り付いた髪を、エドワードが拭ってくれた。
そうして絞ったタオルをあたしのおでこに優しくのせた。

「ねぇ、エドワード…あたし本当に平気だってば」

「嘘をつくのが下手過ぎるよ、ベラ」

「本当だってば!」

あたしは必死になってエドワードに訴えた。



どうしてこんな日にあたしは風邪なんかひいてるんだろう。
本当に馬鹿みたい。
折角フォークスに訪れた太陽の光が外に降り注いでいるというのに、あたしはベッドに縛り付けられている。

「エドワード…本当よ」

「馬鹿だな、ベラ」

「知ってるわよ、何回も聞いたから」

エドワードはくっくっと笑いを堪えている。

「ほらほら、こんなに汗をかいて…」

そう言って、エドワードはあたしの顔をおでこにのせていたタオルで優しく拭いてくれた。

「熱い…?」

茶色がかったトパーズ色の瞳が心配そうに覗いてくる。
それだけであたしの胸は早鐘を打っている。

「…ちょっと…ね…」

エドワードの熱い視線から顔を逸らして呟いた。

するとエドワードは顔を拭いていた手を止めて、タオルを枕元においた。

「ベラ…」

エドワードの顔が近付いてくる。
強力な磁力を持っているかのように、あたしはエドワードの瞳に釘付けになった。

ちゅ…と音をたてて彼の冷たい唇がおでこに触れる。

「…気持ちいい…」

高熱で気分が高ぶっているのか、恥ずかしげもなく感想を述べれば、エドワードは得意そうな顔をしてあたしのこめかみにキスをした。

「タオルなんかより…この方が冷たいだろう?」

それからエドワードはあたしの顔中にキスを落とした。―――右頬、瞼、鼻筋に鼻先、顎をゆっくり掠めて左頬にも。
そして耳にキスをした。

「熱に浮かされているベラって…凄く可愛いよ」

耳元で熱っぽく囁かれては、体温が一気に上昇するのを避けられる筈がない。

「…ばか…なに言って…」

エドワードを引き離そうとぐいぐいと胸を押すけど、風邪をひいているせいで―――まあひいてなくてもだけど―――エドワードはピクリともしない。

「ベラ…」

エドワードの大きくて冷たい手があたしの顔を包み込んで…エドワードはあたしの唇に自分の唇を優しく押しつけた。

「ベラには早く風邪を治してもらわなきゃ困るからね」

殆ど唇がくっついたままでそう言われた。
エドワードが話すと唇があたしの唇を掠る。
甘い吐息が胸いっぱいに広がっていく…。

でもきちんとキスをしていないのが焦れったくて、もどかしくて、あたしはエドワードの顔を両手で挟むと、目を瞑ってキスの続きを促した。

「…全く…敵わないよ、ベラには」

ため息混じりに苦笑しながら、エドワードはもう一度あたしにキスをした。





それからと言うと、あたしはエドワードのキスのおかげですっかり熱が上がってしまった。

けれど翌朝起きてみればすっかり風邪は良くなっていて、エドワード曰く昨日沢山汗をかいたのが良かったんだろうって…。

あくまで自分の手柄にするつもりらしい。

得意な顔をして窓枠に寄り掛かっているエドワードに近付くと、あたしはエドワードの鼻先にキスをした。



「今度こそ、草原に連れて行ってね」

「そう?風邪をひいたベラはすごく淫乱そうだったから、僕としてはもう一度見たいんだけどな」

あの歪んだほほえみを浮かべながら、エドワードはあたしのおでこにキスをした。














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