+Novel+
□お泊まり会
1ページ/5ページ
―――この“お泊まり会”も、今日で何回目になるんだろう。
毎回“お泊まり会”が開催される度にチャーリーに嘘をついていると思うと、とてもいたたまれない。
………ごめん、パパ。
あたしやっぱりティーンエイジャーなの!
『お泊まり会』
長かった一週間が終わり明日から週末を迎えるだけあって、誰もが急ぎ足で帰り道を行く。なかには週末返上で部活に繰り出す子もいたりして、他人事ながら、熱心だなあ…なんて考えたりする。
あたしはいつも通り、“彼”と一緒にボルボまでの道のりを歩いて行く。
普段なら、そのまま彼に送られて帰宅し、チャーリーが寝静まった辺りにまた彼がやってくるのを待つ。……んだけど…。
今日はいつもと違う。
何故なら、あたしは今日家に帰らないから。
そう。エドワードの家で夜を過ごす。
恒例の“お泊まり会”だ。
勿論チャーリーはエドワードたちはいないものだと思っている。
エドワード曰く、そう自分に言い聞かせているんだとか。
男達が出払ったカレン家で、残された女達は仲良くお泊まり会ってワケ。
それって最高よね。
けれど最近では、“お泊まり会”って言うのもただの名目になってきた。
というのも、男達は出払ってないから。
もっとはっきり言っちゃえば、エドワードはちゃんとフォークスにいる。
あたしは、エドワードの部屋で夜を過ごす。
でも、彼氏の部屋に泊まるからって何かいつもと違うことをするわけじゃない。そっちの方は嫌になるくらい頑なエドワードだから。
ただ、チャーリーに見つかることを心配しなくて済むから、いつも通りの声音で話せるかな。
本当、ただそれだけの理由。
他にやましいことなんて、何も無いんだから!
「ベラ、着いたよ」
エドワードの声で目が醒めた。
あたしったら、寝ちゃってたんだ。
「ん…分かってる」
そう応えると、エドワードはくっくっと笑って、そして―――
キスをした。
ひんやりとした滑かな唇が、あたしの唇をゆっくりとなぞっていく。
閉じることを忘れた唇から、エドワードの甘い吐息が口の中に入ってきて、それだけで頭がくらくらする。
―――そろそろこのキスも終わりかな…
そう思っていたから、エドワードが次に示した行動には本当に驚いた。
エドワードはキスをやめるどころか、あたしの首の後ろをしっかりと手で支えて、自分の舌をあたしの口の中に押し込んで来た。
あまりの衝撃に目を見張ってしまう。
身体中が一瞬にして熱を帯びる。心臓はハチドリみたいに忙しなく胸を打つし、呼吸は10分間休みなしで走ったあとみたいに浅くて速くなる。
エドワードが始めて、エドワードが終わらせた。
軽い酸欠状態に陥ったあたしから数センチ顔を離して、エドワードも顔を紅潮させている。
「……いきなり…ど…し…たの…」
息も絶え絶えにそう呟くとエドワードはにっこり微笑んで、
「ベラが可愛かったから」
と答えた。
―――それじゃ質問の答えになってないわよ!
あたしの静かな怒りを余所に、エドワードはもう助手席のドアを開けていて、あたしを抱き抱えるために腕を伸ばしている。
「ほら、ベラ」
「…いい、自分で歩くから」
「そんなこと言って、顔が紅いよ?」
完全に面白がってる…
「誰のせいよ!」
「え?僕のせい?」
しまった…やられた…
「僕のキスに酔っちゃった?」
ふふんと鼻を鳴らして勝ち誇った顔をしている。
「だ…誰が!ただの息切れよ!」
エドワードの手を振り払い、あたしはカレン家の玄関へとズンズンと進んで行く。
エドワードは後ろでずっとくっくっと笑いを堪えていた。
TO BE CONTINUED…