Novel

□猛暑に弟
1ページ/1ページ


猛暑に弟
「暑い。鬼鮫、冷えピタ(未使用)」
「全く〜イタチさん、これで冷えピタ(使用済み)、何枚目ですか!?」
暁のアジトのリビングのソファーで、冷えピタ(使用中)をデコに貼り付け、グッタリしている怪しい男は、言うまでもなく、うちはイタチだ。その傍らには、冷えピタ(使用済み)が山のように捨てられているゴミ箱があった。
「角都さんに怒られますよ…」
鬼鮫は冷えピタ(未使用)を持ってくると、イタチのデコに貼ってある冷えピタ(使用中)を剥がした。そして、冷えピタ(使用済み)を丸めてゴミ箱に放り投げた。そして冷えピタ(未使用)のシートを剥がすと、イタチのデコに渾身の力を込めて擦り込んだ。
「ヒヤリ……」
意味不明な鳴き声をあげると、イタチはまたソファーでゴロゴロ、を再開した。
「おい、イタチ、リーダーが呼んでる」
サソリがイタチの姿を見て、撃沈した。
「わかった。今行く」サソリを飛び越えイタチは、リーダーの元へ向かった。
「何だ」
この発言から、リーダーとイタチ、どちらが偉いかわからない。
「任務だ」
「やだ、暑い」
「冷えピタ(使用中)があるじゃないか」
「やだ」
「弟と関係していてもか?」
「やる」
冷えピタ(使用中)を剥がして、リーダーの目にビトリと貼るイタチ。
「うわー!!!!!」「俺からのお礼だ。受け取れ」
と言うと、イタチは、リーダーの部屋を出ようと、立ち上がった。「待て、任務の内容をまだ話していないだろが」
「あぁ……そうだった」
イタチはリーダーの冷えピタ(使用中)を剥がし、自分のデコに貼った。
「暑い」
「へ?」
「リーダーのせいで冷えピタ(使用中)が熱くなっている」
いや、それイタチが貼ったんだろ。と言いたいのを堪えたリーダー。
「すまん」
素直に謝っておく。
「俺が頼みたいのは、大蛇丸をスパイしてきて欲しいってこと何だが」
「へー」
「最近、大蛇丸は、御前の弟のえー……サソリ……?」
「違うわっ!!サソリならあそこだぁ!」
「えー……サスロー?」
「サスケだぁ!!!!」
「すまん」
素直に謝っておく。
「その、サスケに怪しいことをさせているらしい(忍術的にね)」「な……信じられぬ。サスケを……俺のサスケを……キィー!!!」
変な鳴き声を上げるイタチ。
「よしっ!今すぐ行くっ!」
暁のマントに大量の冷えピタ(未使用)を忍ばせ、額当てで冷えピタ(使用中)を隠すと、大急ぎでアジトから走り去った。
「イタチさ〜ん?」
鬼鮫はぽかんとしていた。

イタチは、大蛇丸達のアジトに潜伏していた。大蛇丸に見つかったら、面倒だ。こっそりサスケだけをさらって逃げてやる、とお考えのようだ。
「……あれはっ!サスケ!」
イタチは大蛇丸がいないことを確認して、瞬身の術でサスケに迫った。
「サスケぇ!!!お兄ちゃんだぞぉ!」
「……!……」
突然、自分のにっくき仇が現れたので、(しかも変な言葉を吐かれて)しばらく、隙を作ってしまったサスケ。「にぃちゃん、平和の為に頑張っちゃってんだぞ〜!」
少し間を空け、
「そして、お前の為に!」
イタチは、冷えピタ(未使用)のシートを剥がすと、サスケのデコにビトリと貼り付けた。
「サスケぇ!夏なのに、手足が冷たいぞぉ!」
イタチはサスケの手を持つと、顔をスリスリしてきた。サスケの意識がようやく正常に戻ったようだ。
「クソ兄貴がぁぁぁ!!!!!!!」
そう言って、兄の顔をひっぱたく。
「サスケぇ……にぃちゃん痛いぞ……」
「っるせええぇぇぇ!!」
その瞬間、イタチがマントを脱ぎ捨て、サスケに被せたのだ。
「うわっ!なにするんだ!」
「お前をキッドナッピングしに来たんだ」
「えぇ!?」
「任務だ任務」
嘘だぁ!リーダーはそんな、弟誘拐しろ、なんて一言も言ってないぞ!!
「あら、イタチくぅん。元気そうじゃない?」
「……(チッ)あぁ。お陰様で」
「あら、やだ。イタチくんたら、弟誘拐しようとしてたのね。悪趣味ねぇ。サスケくん、こんな人に会うときは、私が一緒にいなきゃダメよ」
「サスケの保護者はこの兄である俺だぁ!!」
「私の方がサスケくんに近いわよ」
……家の問題ですか。血の繋がりではないのですか。
「世の中いくら捜しても、サスケと血の繋がりのある人間なんざぁこのにぃちゃんしかいない!!!!」
アンタが殺ったんだろー!
「ま、それはサスケ、お前の為だし」
じゃあ、マダラはー!?
「あれはお面族だし」お面族って何〜!?
それより、ナレーションと会話しない!
「サスケだと思ってた」
違う!
「さてと、大蛇丸!俺のサスケに何をしたぁ!?」
「ふふふ……私から、プレゼントをあげたのよ(^3^)-☆Chu!」
サスケの首の呪印にそっと触れる大蛇丸。
「そんな怪しいものを憑けられたのか、サスケぇ!!!!!」
泣き出すイタチ。サスケはイライラしているようだ。
「もう!サスケは離さない!」
泣きながら、サスケを抱きしめるイタチ。サスケはとてもひんやりしていた。
「ヒヤリ……」
また、意味不明の鳴き声を発してイタチは額当てを取った。
「キャア!!色気ムンムンよ!イタチくん!」
「あいよ」
額当ての裏に貼っておいた、冷えピタ(使用中)を剥がして、大蛇丸のデコに貼ってやった。
「ヒヤリ……」
また、弟を抱きしめるイタチ。サスケの顔から汗が吹き出す。
「暑い……兄貴、暑い……」
消耗した体力でやっとの思いでイタチを剥がす。
――これ、どうしよう……。
困惑。
「サスケぇ!!!」
――なんで、くっついてくんだよ!!
イタチがサスケにペタペタしている。
「ヒヤリ……」
そして、目をカッと見開くと、彼の瞳は万華鏡写輪眼に切り替わっていた。
「サスケ。お前は既に月読の世界にいる」
沢山のイタチが、サスケのもとへ押し掛けてくる。
「ふふふ……!」
イタチはサスケにくっついて、
「……ヒヤリ……」
訳のわからぬ鳴き声をあげた。
「うわあああああ!!!!!!」
サスケは月読時間でそれを、100年も喰らった。
「……ハァ……ハァ……」
イタチは気絶しそうなサスケを肩に背負った。そして、大蛇丸に
「サスケは貰っていく」
と言って、去ろうとした。しかし、
「サスケくぅん!!!」
大蛇丸が首と手を伸ばして、飛び去ろうとしたサスケを奪った。可哀想に、サスケは真っ青な顔をして、気絶していた。
「チッ」
イタチは諦めて、去っていった。
――サスケぇ!!!!!絶対お前を迎えに来るからなぁあああああああああ!!!
そう心の中で叫びながらアジトまでダッシュしていた。
――次の夏……必ず、必ずサスケを連れ戻す!!
その日から、彼はアジトのリビングのソファーの上で、ゴロゴロしながらサスケに触れたときの『……ヒヤリ……』という、感触を彼は思い出し、一人その余韻を味わっていた。……勿論、冷えピタ(使用中)を貼って……。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ