小説

□な
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所詮、他人








とても寒い夜
本格的な冬に到達したことがわかる
それにしても寒すぎる、と思って窓を見たら案の定開いていた

「意味わかんない」

本音をぽろりと溢し、億劫ながらも窓を閉めに数歩歩く
窓を覗くと外は真っ暗で、人一人も歩いていなかった

こんな日は比較的体温の高そうなポケモンと寝るに限る
そう思ったら、ふとNの顔が思い浮かんだ
確かに暖かそうだな、と一瞬だけ思ったがすぐにその思考をかきけす
そんな都合良く彼は現れないし、まずポケモンではない

「馬鹿すぎるだろ、自分」

頭を抱えながらも、なんとなくライブキャスターを取り出してみる
それをじっと見ていたら、Nは今頃寝ているだろうか、なんて彼のことばかりを考えていたことに気付く

少しの間眺めたが、結局それを使うのは諦めた
持っていても仕方ないので早々にしまおうとした瞬間、聞き慣れた機械音が鳴り響いた
着信。それもNからの

「もしもし」
「やぁ、トウヤ寝てた?」

他愛もない会話が始まる
ニコニコと笑っていて、可愛い

そこから少しの会話が続いた

「あ、のね?」

ふと不安そうな声を出し俯いてしまった
先程までの明るい表情からは考えられない

「どうかした?」
「いや、大したことじゃないんだけど、ね?」

なんとも煮えきらない返事が返ってきた
よく見ると若干頬が紅い

「今から会いたいなー、なんて」

コイツも同じことを考えていたのか
そう思うととても嬉しい気持ちになる

「俺も同じこと考えてた」
「え、うそ」

真顔で言われた
どうも俺のその返答は、予想していなかったようで
でもすぐにはにかんだように笑った

「以心伝心かな?」
「そうかもな」


ライブキャスターの電源を切って夜空を見上げる
同じ空の下待っている君に会いに駆ける


「以心伝心、か」

なんだか無駄に嬉しくなった







所謂、恋人



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