小説
□え
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きっと答えは見つからない
その理由もわからない
俺は考える
何故コイツ―Nのことだ―を好きになったのか
何もかもが違いすぎて、
純粋過ぎて、汚れきった俺には全くさっぱりわからない
「運命なんだ。僕がトウヤを、トウヤが僕を好きになることは」
そんなことを言われた
不思議なことを言ってくれる
運命なんてもう信じることが出来なくなった俺には到底理解できない
でも好きになってしまったのは事実であり真実
彼はこんなことも言ってきた
「好きになるのに理由はないんだ」
なら何故今俺は悩んでいる
この一言で俺の中の世界が一つ壊れた
否定されて拒まれた
しかしそんなに大袈裟に考える程果たして大きな題材であったかと問われれば、否としか答えようがない
結局のところ、彼の言う通りやはり理由など存在しなかったのだろう
その証拠に、横で微笑む彼を見るだけで幸せで満たされる
「好き過ぎて辛くなってきた」
我ながらバカだと思いながらそう呟く
そんなバカな俺を思考の渦から救い出すかの如く、数歩前を歩く彼の腕が俺の腕を引っ張り笑顔を見せる
「なら辛くなくなるまで愛しあおうじゃないか」
夕陽に溶けそうな笑顔に、今度は俺が彼の髪を思い切り引っ張りキスをした
(答えも理由もいらなかった)