小説

□う
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雪が、降った
ただそれだけで、なんだか寂しい気持ちになった





「雪だるま、作ろうよ」

雪が積もった
嬉しくて隣にいる彼に話し掛けたら、笑われた

「お前、幾つだよ?」
「えー、秘密?」

口許に指を当てて答える
あ、今ちょっとイラッとしたな
そんなことは彼の表情を見ればすぐにわかる
口許がぴくりとしたから

「いいから行くぞ」

手をひかれ、進んだ


しゃりしゃり

雪を踏む音は何故かわからないけど気持ち良くて楽しい
調子に乗って色々な歩き方を試してみる

「あ、」

危ない、と思った時には既に手遅れ
顔から雪に突っ込んだ

「痛い…」
「え、バカ?ていうか、大丈夫か?」
「う、うん…」

雪のせいで転んだというのに雪がクッションになって怪我は免れた
皮肉なものだ

彼の言葉の前半は気にしないことにする


そしてまた特に何も考えず前に進む
ふと振り向いたら、足跡が残っていた
目の前にある白を忘れさせる程度には汚かった

「ねぇ、トウヤ。やっぱり雪だるま作ろう」

僕のその言葉に、彼は一瞬きょとんとした
けど、すぐに笑顔になって言う

「仕方ない、な」

その表情があまりにも優し過ぎたものだから、たいあたりをかましてやった

彼は頭から雪に突っ込んだ










雪を見て寂しくなるなら
寂しくなくなるまで一緒に雪だるまでも作ろうか


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