小説

□あ
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夕陽に溶ける街並みを歩く君を見つけた


「トウヤっ!」

そう呼べば、笑顔で振り返ってくれる
手にはモンスターボール
ポケモンセンター帰りのようで、ポケモン達は元気なようだった

「やぁ、N」

手を振り僕を呼ぶ
その声を聞くだけで、いつも安心する
それはまるで母親が幼子に語り掛けるように優しい

僕は彼に抱き着いた
幾分か身長の低い彼はそれを気にしているらしく、思い切り僕を引き剥がした
少し不機嫌になったように見える

「会いたかった、トウヤ」
「この前会ったばかりなのに?」

茶化すように笑われた
きっと彼は分かってない
僕が何れ程恋い焦がれているのか
いつだって一緒にいたい、そう思っているのに

「バカトウヤ」
「拗ねないでよ、Nの笑顔が見たい」

揉み上げを思い切り引っ張られ、ぐっ、と彼の顔が近付いた
今の彼の笑顔はなんだか怖い

「ね、N?」

そう言って、距離がさらに近くなった
顔が熱い気がするのはきっと気のせいじゃない

キス、される
そんな感じがして目を閉じた
けど、一向にその気配はなく恐る恐る目を開けたら、そこには得意気な表情をした彼

「期待、した?」
「…した」
「仕方ないなぁ」

言葉とは裏腹に眩い程の笑顔で僕を見る
視線が交差する
それがなんだか気恥ずかしくて、ふ、と視線を外した
その瞬間、また思い切り揉み上げを引っ張られ、思い切りキスされた

「いっ…んぁ、…ふっ、」

痛いのと気持ちいいのが混ざって変な気分だった
恥ずかしいという気持ちはもうない
彼はいつもこうだから

「…N、好きだ、だから」

我慢出来ない、そう小さく呟かれた
陽はもう落ちかけ、人もいない

「トウヤ、僕も好きだよ」

ぷつん、と何かの糸が切れたかのように、目の色が変わったのが分かった

服に手を掛けられ、まさぐられる
くすぐったいような、なんとも言えない気分になる
そんな僕の困惑した表情を見て、彼は口角を上げる

服の隙間から冷たい空気が入る

こんな状況でも、何故だか満たされるように感じた




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