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【もしもクロスが医者だったら】



「マリアンせんせーい?」

「……」


お疲れなのは解ってます、ええ。
オペが終わったばかりなのも。
でもですね。



わざわざ受付の私呼んで膝枕っていうのもどうなんですか?



屋上です。
誰かが来るかもしれないし、誰も来ないかもしれない。
見つかると後々厄介なんですよ。
仕事そっちのけだし。



「せーんせー」

「……」



ホント、今日リナリーと同じシフトで良かった。
じゃなかったら今頃どうなってたか。


紅い髪が、真っ白な白衣の上だと目立つ。
撫でる様にして指を通すと、案外サラサラだった。
ちょっと羨ましい。




暫らくそうしていると、この人はわざわざ撫でている手の方に頬を寄せてきた。
……可愛いなこんちくしょう。
多分これは撫でろとの合図なのだろう。



「お仕事どうしたんですかー?」

「……」



今更か。

助手のアレン君が可哀相だな。
あの子小児科の筈なのに外科で手伝わされて。






そろそろ私も戻らなきゃ。
10分間膝枕してあげたんだから、充分でしょ。
サービスよ、サービス。



「私戻りますねー」

「……誰の許可を得て戻る」



だから、何でこんな時に起きるの。
そもそも本当に寝てた?
大体許可って、私が出したに決まってるでしょ。
いい加減仕事しなきゃ。



「あの、私仕ごんぉ!?」


いや、だって首を後頭部ごと無理矢理下げられたんだもの。
そんな声位普通に出るわ。

でももっとビックリしたのはね。
先生の顔が近づいてきたこと。


一瞬、だったと思う。
だけど私には、その触れるだけのキスが永遠の様にさえ感じられた。





「行くな」




そう囁かれたら、行くに行けないじゃない。






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