小説執筆2
□意外と平気でのろける
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良い天気だからと中庭の芝生に横になっていたら、いつの間にか寝てしまったらしい。
少しだけ意識が浮上しただけのぼんやりとした視界。
深く息を吸おうとして気付く。
「おもい…」
鳩尾あたりに何か乗っているようだ。
少しだけ頭を起こして目線を下にやると、見慣れすぎたものが見えた。
見慣れているからこそ、激しく驚いた。
「スッ…!」
大声を出しそうになった口を慌てて閉じる。
スコールが、俺の腹の辺りに頭を乗せて寝ている。
こちらに背を向けているが、ゆっくり寝息をたてる姿はほぼ毎朝見ているからわかる。完全に寝ている。
寝起きと言うことも手伝ってか、いや手伝わなくても何でこんなことになっているのか全くわからない。
わからないが
何だこれ可愛すぎるだろう…
揺らぎに揺らぐ理性をなんとか押し留めながら観察してみる。
スコールの近くにいくつかファイルが置いてある。なんかの企画書だとかSeeD試験の受験者だとか、そういうのだろう。
こいつは休憩中も仕事を持ち歩くから、ふらっと息抜きでもしに来たら俺が寝てて何か気にくわないから自分も寝てやるとか、そういうのかもしれない。
ただ、何故俺に乗っかっているんだろうか。
ああ、気にくわないから嫌がらせってことだろうか。苦しめと。
「何にしろおいしいな…」
呟いたらスコールがごそごそと動いたから起きてしまったかと思ったが、少し体勢を立て直してまたゆっくり寝息をたて始めた。
かわいい奴め、と顔が緩むと同時に欠伸が出たので、特に何かあるわけでもないし、うちのも寝てるし、折角だからもう少し寝ようと目を閉じた。
「のろけてるわ」
「ほんと」
サイファーが二度目の眠りに落ちて数分後。
近くを通りかかったキスティスとリノアが二人の姿を見て立ち止まり眉間に皺を寄せた。
「スコール、さぼってるアレを蹴り潰してくるとか言ってなかったかしら」
「もう、嫌になるくらい幸せだわ…」
「まったく」
リノアは眉を寄せたまま呆れたように笑い、キスティスは時計を見た。そしてリノアと似たような表情で微笑むと歩を進めた。
「まぁいいわ、フル動員でやるほど仕事もないし」
「今日は平和ねー」
「スコールも素直にサイファーとくっついてたいって言えば良いのに」
「無理無理、そんなことしたらスコール大変なことになっちゃう。」
そんな会話を弾ませる二人の顔は、幸せそうだった。
セルフィが、昼寝中のサイファーとスコールの姿を写真におさめ、更にそれをラグナに見せてしまい、スコールもラグナも大変なことになったのは数時間後のことである。