小説執筆2
□だって年下
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「旦那ぁ、目になんか入った。痛い。」
倒れたモンスターの上に、顰めっ面のチェスターが座っている。
ついさっき彼が倒したそのモンスターの毛皮は高値で売れる。座り心地はとても良さそうだ。
「なんだ?睫毛でも入ったのか」
「わからん。ちょ、痛い見て」
無意識に擦ろうとするチェスターの腕を叩いてやめさせる。眼球に傷でもついたら厄介だ。
「もうちょっと上むけ、暗い。」
「うう」
近くで見ると涙目になっている。本当に痛いんだろう、早くなんとかしろと言わんばかりに片足をばたつかせてモンスターの体を揺らす。
正直、小さい子供のようでかわいい。
私のそんな考えに気付きもしないチェスターの頬に手をやってよく見ると、ある物を見つけた。
「こら大人しくし…あ、」
「なんだ!」
「もう取ってやるからじっとしてろ!」
途端にピタリと動きを止めたチェスターによしよしと声をかけて、目元に反射する一本の細い毛を取り除いた。
「これ。こいつの毛だな」
倒れたモンスターと同じ色をしたもの。
矢で射られた時に散ったものが入ったんだろう。白く光る毛をそのへんに捨てた。
「あぁあ痛かった」
「まったく、そんなに騒ぐこともないだろうに」
「目はどうしたって鍛えられないだろ!あ、旦那は目に入れても痛くな」
「早く行くぞ」
「なんで!」
白昼堂々おかしなことを言い出したチェスターに背を向けて歩き出すと後ろから地を蹴る音が聞こえた。
「旦那!」
「うわっ」
その勢いのまま後ろから抱きつかれて思いきりよろける。
後ろを睨むとヘラヘラ笑ったチェスターがくっついていて、思わずため息をつきそうになった。
「危ないな!」
「なぁ、今日は宿に泊まれるよな?」
「はぁ?」
ヘラヘラ笑っているチェスターの目は笑っていなかった。
「誘われてるような気になるな、あれ!」
あんな近くであんな風に見つめられたら云々と言いながら離れない奴に血の気がひいたような気がした。
でもやっぱり、変にはしゃいでいる姿は正直かわいいと思う。…手遅れなんだろうか。
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