小説執筆2

□目は口ほどに何とやら
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「昼飯食いに行くかぁ」
「まだちょっと早いもんよ」
「つっても暇だろうが」
「まぁ、それはそうだもんよ…」

案内板の前で一息つくと、さてどうしようかという話になった。
魔女戦争終結後のガーデンは驚くほど平和で、定期的に湧いて出るモンスターの討伐以外に特にやることはない状態だ。
風紀委員としての仕事といえば見回りとゼルのスピード違反の取締りとセルフィの暴走による騒動の抑制くらいで、あとは運営委員の書類処理が少しダルイ(サイファー談)くらいだそうだ。
必然的に暇な時間が多くなり、バラム特有の緩い空気が更に緩くなっている。私や雷神は全く構わないけど、サイファーは不満だと思う。

「どうするもんよ、風神」
「何故、私?」
「いや、お前は腹減ってんのかって話」

そう言うサイファーの視線が、一瞬、私から外れた。あ、と思って、そうだ、と思った。

「あ、スコールだもんよ。相変わらず眉間に皺よってるもんよ」
「余計なお世話だ…」
「なに、お前休憩?」
「ああ」

エレベーターから出てきたスコールは真正面の私達に気付いて、きっとスルーしようとしたんだろうけど雷神に捕まってしまった、そんなところだろう。眉間の皺が少しだけ濃くなった。もったいないと思う。

「暇そうだな、あんた達は」
「今暇になったんだよ、ちゃんとやるべき事はやってるからな」
「今から休憩なら、スコールも一緒に昼め ぎゃっ!!」
「!?」

咄嗟に雷神の足を蹴ったら、2人が驚いた顔でこっちを見た。スコールの眉間の皺も消えていた。

「あたし、まだお腹すいてないから、もう一回雷神と見回りしてくるよ。」
「…あ、ああ」
「だから2人でお昼食べてきて。行くよ、雷神」
「え、俺は腹減って、いたたたたたた」

空気の読めない(仕方の無いことだと思うけど)雷神の首根っこを掴んで、無理矢理歩き始める。私がいきなり雷神を蹴ったことと珍しく喋ったことに驚いたサイファーとスコールは、やっと事態を理解したのか不思議そうに顔を見合わせていた。
横目でそれを確認したら、つい口元が緩んでしまった。

きっと、私の思うところは、当たっている。
素直なのはサイファーだけじゃ無かったんだ、と少し意外だったけど。


「いきなり訳わからんもんよ、風神」
「煩い。でもコーヒーくらいなら奢ってあげる。」
「ふ、風神が機嫌いいなんてちょっと怖、何でもないもんよ…」



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