小説執筆2
□目は口ほどに何とやら
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風神は思う。サイファーは、素直そのものであると。
「てめぇ、ガーデン内を全力疾走すんじゃねーって昨日も言ったろうが」
「だって!急ぎでシド学園長に渡さなきゃいけない書類が、学園長今から出かけるって言うし」
「さすがの鶏頭に俺様もお手上げ寸前だぜ、チキンこの野郎」
「だからチキンって言うなっ!」
諸国の諸々を何とかしてサイファーが戻ってからまだ数ヶ月、彼はスコールの命令によってバラムガーデン運営委員の仕事と風紀委員の仕事を掛け持つことになった。
サイファーに散々苦労と迷惑をかけられた幼なじみ達のささやかな嫌がらせかもしれない、あるいは、自分達のことを気遣ってなのかもしれない。
どっちにしろ、以前のように3人で居られる時間があることを私も雷神もとても嬉しく思っていた。
ただ、いろいろなものが少しずつ変化していくのを、私は感じている。
「次やったらそのトサカ引っこ抜くからな!」
「トサカじゃねえ!」
ぎゃあぎゃあと騒いでいるサイファーとゼルは、以前はまさにいがみ合いと言った感じだったが、今は兄弟喧嘩のように見える。
言い争いの最後、サイファーは「で、その急ぎの書類とかいうのは何とかなったのか」と尋ね、ゼルは「ギリギリ!車のエンジンかかったとこで本当滑り込みセーフだぜ、もう」と答える。
こんな光景、見たことがなかった。
他の幼なじみ達とも、リノアとも、不遜な態度や嫌味は相変わらずだが、こういう穏やかな会話をしていることが増えた。
その中で、変わっていないようで最も変わったのがスコールに対しての態度だと思う。
話している最中に、サイファーの視線がどこかへ向く時がある。さり気なくそれを追うと、その先には必ずスコールが居るのだ。
何か用があるわけでも、喧嘩をふっかけるわけでもなく、ただチラリとスコールの存在を確認する。
歩いているときは一瞬、立ち止まって誰かと話しているようなときは相手を確認する。スコールの状態によって様々だが、姿を視認できる場合に必ず視線が向く。
多分、無意識。
最近サイファーとスコールが会話しているのを見たこともあるが、仕事の話だったり訓練の話だったりで、傍目には前と変わらないように見えているだろう。
でも、私はなんとなく気付いている。
上手く言えないけれど、スコールを見るときの彼の目は、いつもより綺麗だ。
愛しいような優しいような、安心しているような、綺麗な色をしている。
サイファーは、スコールのことを好きなんだ。
そう確信を得るのは、なんら難しいことではなかった。