小説執筆2

□これだから困る
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「お前…!!」
「ん?こんなところで何をしてるんだ」
「今それを言う権利はねえぞコラァ」

バラムの駅の改札を通った所で目標を捕獲した。荷物を持っているところを見ると何か買いに行っていたらしい。
だが、そんなことはどうでもいい。

「なんでデリングシティだオイ説明しろ」

遠出にも程があるだろうが。

「説明…デリングシティにしかないから」
「何が」

通行人の邪魔にならないよう隅に移動して問い詰める。
スコールは少し首を傾げた後、「これが」と持っていたものを寄越してきた。言葉を諦めたらしい。

「これがってな、お前、…」
「今日の朝で調度きらしたから。」

紙袋の中を覗いたら、よく見知ったロゴが目に入った。
デリングシティにしかないコーヒー専門店の、その店特製ブレンドのコーヒー豆。今、俺が一番気に入っている物だ。

「あんた、それ以外だと不機嫌になりそうだから」
「…別に…え、これ、買いに行ってたのか?」
「だから、デリングシティにしかないって言ったじゃないか」
「いや、お前これ仕事中に買いに行かなくても」
「息抜き…休憩?」

スコールは腕を組んで、また少し首を傾げた。こいつの癖だ。何回見ても抱き締めたくなるぐらい可愛い。
だが、ここで負けたくはない。許しそうになる自分を抑え込む。

「長い休憩だな。どれだけ心配したと」
「携帯に連絡してくれたら、すぐ解決したと思うが」
「……それだ………」

つい額に手をやってしまう脱力感。
何故キスティもそうしなかったんだとか思ったが、すぐ探しに行こうとしたのは俺だった。馬鹿なことをした。
それとも、自分が思うより焦ったのか。
どっちにしろ少し情けない。

「でもお前が一言声かけても良かったんだぞ」
「確かに。悪かった」
「仕事終わってからでも良かっただろ」
「………」

突然スコールが黙った。無言で見つめてくる。何か地雷を踏んだかと思ったが、違うらしい。
時計で時間を確認して、小さく溜め息をついたのが聞こえた。

「今日はあんたが訓練所に行きたがるかと思ったんだ。仕事終わりに買いに行こうとしたら、あんた付いてくるだろ?」

で、聞こえてきたのは予想の斜め上の、斜め上。
こいつ、普段は他人に関してひどく鈍感なのに、まさに言い当てられて言葉が出ない。

「いつまでアホ面晒してるつもりだ。早く戻らないと定時で上がれないぞ」

随分な言われよう。
何の躊躇いもなくさっさと歩きだしたスコールの背中を見て、笑いがこみ上げた。
携帯を出してキスティにメールを送る。
用が済んだ携帯をポケットに戻して、スコールの隣に並んだ。

「訓練所、付き合ってくれんだろ?」
「俺の仕事が終わればな」
「それに関しては何の問題もねえよ」
「なんで?」
「俺の勘は良く当たる。」




案の定、新しく書類が仲間入りすることはなかった。




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