小説執筆2
□これだから困る
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「ねえ、スコールは?」
「は?」
減っては増え、また減らしても増える紙きれにいい加減集中力も底を尽きそうだと思った途端にキスティのこの質問。
タイミングが良すぎるから見計らっていたのかと思ったが、雰囲気から察するについさっき部屋に戻ったらしい。
「居ないのよ、指揮官室に」
「休憩にでも行ったんじゃねえの」
「有り得ないわ、あなたがいるもの」
「いや別にいつもいつも一緒なわけではないからな」
なけなしの集中力も霧散してしまった。机の上にはまだ数束の書類が鎮座している。
今となっちゃそんなことよりも気になるのはキスティから得た情報だが。
「ガーデンのどっかに居ねえのか」
「セルフィ達に探してもらったけど、さっき全員から目標は発見出来なかったと連絡があったわ」
「マジかよ…あいつ何してんだ」
書類の上にペンを投げて立ち上がったら体が少し軋んだ。ちくしょう、今日は一回もハイペリオンに触ってねえ。
何としても定時にあがって訓練所だ。
「探してくれるのね。」
「そのうち帰ってくるだろうけどな」
「そんな顔で言われても説得力ないわ」
ドアを閉める時、少し見えたキスティは面白そうに笑っていた。
「心配そうな顔して。似合わないわね」
しっかり聞こえたが、聞こえてないってことにした。
「居ねえし!」
どうせ近場のバラムに居るだろうと思っていた手前、妙に悔しい。
駅も港もホテルも、それはもう探し回ったがスコールの姿はなかった。
(嘘だろ…あいつが仕事抜け出して遠出するなんて誰が考えつくんだ…)
わかっている気でいただけなんだろうか、俺は。確かにスコールの行動は予想の斜め上を更に斜め上にいくことがあるが、それは滅多に発動しない。
ましてや仕事中のスコールに、それは起こり得ないはずなのに。
(その起こり得ない行動を引き起こす原因は何だ)
考えたところで全く思い当たる節がない。今日もいつも通りだったはず。
いやそういえば、朝は珍しく寝起きが良かったスコールが二人分コーヒーを煎れたが、…関係あるわけがない。
「まさかマジで何かトラブルに…」
「あら?サイファー君じゃない」
キスティに連絡しようと携帯を出そうとしたところで、あまり馴染みのない声に話しかけられた。
ポケットに手を突っ込んだまま振り返る。
「あ、ゼルの」
「覚えてくれてる?嬉しいわー」
たしか、チキンを引き取った育ての親だったか。何回か会ったことがある。
「どうしたの?怖い顔して」
「…してますか、そんな顔。いや、ちょっと、」
「もしかして、スコール君さがしてるの?」
「…………えっ」