小説執筆

□これだから鈍感は
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そりゃあ、はっきり言わない俺にも責任は有るんだろう。
でも、29歳だろ?頭良いんだろ?今まで色恋沙汰が無かった訳じゃないんだろ?

「そうだクラースさん、貴方に見せたい資料があるんだ。地下の研究所に来てくれないかな?1人で。出来れば夜に。」
「わかった、是非伺わせてもらおう」

おい、なぁちょっと待て。
ルーングロムさんも旦那も、ちょっと待て。

「ちょっと失礼、1人の必要性がわかりませんルーングロムさん」
「何だ聞いていたのかい、チェスター君。君達は興味ないかと思ってね」
「夜である必要性もわかりませんルーングロムさん」
「昼は何かと忙しいだろう?」

傍から見れば、ルーングロムさんに気があるなんてすぐわかるのに。

「どうしたチェスター。機嫌悪いな」
「そういうことは気付くのにな…」

何故自分の身に関する事には感知能力皆無なんですかね。

「残念、番犬がいたんじゃ仕方ない。クラースさん、また今度改めてお誘いするよ」
「ん?ああ、かまわない。」

絶対、心の中で舌打ちしたなあの顔は。
ったく、誰が番犬だ、否定は出来ないけど。

「おいチェスター」
「なに」

そりゃ、好きだと言えない自分も悪いとは思うぜ?
でも、言えないだろ。
男だぞ、お互いに。

…わかってるのに、なんで好きになっちまったかなぁ…


「お前は、良い奴だな」
「……………は、ぁえ?」


え、なに。
ちょっと考え事してたら、いきなり、なに。
なんなんだよ。

その、良い笑顔は。

「何となく、そんな気がしただけだが」
「……あ、そぉ…」
「…いや良い奴だな。そうだな。何言ってるんだ私は。普段からだろ。」
「し、知らねえよ」

ああ。やばいな。
今、絶対に顔赤いな。

「さて行くか」
「…おう」

どうしても、歩き出した旦那の隣に並べなくて一歩離れた所を歩く。
せめてこの顔の熱がひくまで、振り返らないでくれ。

なんて心臓に悪いんだ。

「なあチェスター」
「な、なに。」
「やっぱり、お前は良い奴だと思う。」
「なっ」

ひきかけていた熱が一気に、しかもさっきの倍は顔に上った。

「なんだよ!いきなり!」
「何怒ってるんだお前…」
「怒ってない!」

照れてるんだよ!!
なんて、言えなかった。


番犬でもいい。良い奴止まりでも良い。
俺はやっぱり旦那が好きで、旦那はやっぱり鈍感だ。



―気付かないでほしいと、本気で思った。





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