小説執筆

□愚かだと笑う
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「休んでる暇など有るものか」
「暇は作るもんなんだぞ、知らねーのか」

スコールが閉じていた目を開けると腕を組んだサイファーと目があった。珍しく真面目な顔をしている。

「いつの間に」
「シュウとすれ違いにな」
「なるほど」

いつもなら人を見下しているかのような癪に障る笑みを浮かべるはずなのに。
スコールは未だ真剣な表情のサイファーを見て不思議に思う。

「お前に確認したい書類があってよ」
「ああ、わかった」
「ソファのとこのデスクに置いてあんだ、ちょっと来てくれよ」
「持ってこいよ」
「断る、如何せん量が多い」

既に移動を始めたサイファーに何を言っても無駄とため息をついて、スコールは重い腰を上げた。

ソファが有るのは隣の部屋なので、特に言うほど会話もしない。
サイファーがドアを開けると確かに山積みの書類が目に入った。

「そんなにか」
「だから言っただろ、量が多いって」

多少げんなりとしつつ、先にソファに座ったサイファーの隣に腰を下ろそうとしたスコールは、

突然腕を引かれて倒れ込んだ。

「っわ、ぁ、?」

そして驚いている間にこれまた驚くほど手際よく体勢を整えられて、気付けばサイファーの足を枕に寝かされていた。
いわゆる膝枕である。

「なにっ」

抗議しようとしたら落ち着かせるようにポンポンと胸を叩かれる。スコールは毒気を殺がれ、言葉も飲み込んでしまった。

「この書類の束が無くなるまで寝てろ」
「……俺に確認するんじゃなかったのか」
「何の話かわかんねーな」

サイファーはもう書類を読み始めていて、スコールに見向きもしない。

「寝てる暇なんて、無い」
「もう起き上がれもしないくせによく言うな。黙って寝ろ。」
「時間がないんだ」
「そう思ってるのはお前だけだ」

言葉とは真逆に、スコールは微睡み始めていた。不本意なのだが、緊張の糸が切れたかのように体に力が入らない。
ああ疲れていたのか、ここでようやく気が付いた。

「お前が無理をすると周りの奴らも無理をする。覚えとけ」
「…なんで」
「お前に無理をさせたくねえからさ」
「…よくわからない」
「だから疲れてんだよ。説教は起きた時にしてやる、今は寝てろ」

おやすみと頭を撫でられたのは、現実か夢か、スコールにはわからなかった。




「あら、スコールってば可愛い寝顔。リノアの言う通りね」

キスティスは小さく呟いて、机の上に置いてある整理された書類へ視線を移した。
そして感心したように頷いて、微笑む。

「サイファーも寝てる時は可愛らしいのね、年相応で」

机の上に2本の缶コーヒーを置いて、2人を起こさないように部屋を出る。

「さて、勝手に資料を完成させようかしらね」

やっぱり、一番効くのはこれよねと満足げな顔をして。






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