小説執筆

□愚かだと笑う
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大丈夫だと言いながら、少年は1人で歩いていた。
それは周りにではなく、自分に言い聞かせているのだということに、少年は気付かない。


「ねぇスコール、一段落ついたんでしょう?少しくらい休んだらどうなの」
「一週間後の全ガーデン責任者の会合の準備がある」
「それくらい私たちがやるわよ」
「キスティ達にはキスティ達の仕事がある。俺の仕事は俺がやる。」

気にするなと微笑んでスコールは執務室に入った。キスティスは呆れた顔で少しドアを見つめて、次に目を閉じて大きく溜め息をつく。

「…そういう笑い方をしろと言った覚えは無いんだけど。ねえ?」

そう言って彼女が振り向く先には、一部始終を見てはいたが会話には参加せず呑気にコーヒーを啜っていたサイファーが居て、彼は肩をすくめて見せた。

「アレは頑固だから。」
「あなたからも言ってやってよ。悔しいけどそれが一番効くんだから」
「いいや、あいつに一番効くのは自己嫌悪だな」

もしくはリノア。と付け足して、サイファーは残っていたコーヒーを飲み干した。

「でもまぁ、そろそろ説教する具合かね」
「頼むわよ、倒れられたらこっちの寿命が縮むから」
「了解」

サイファーは紙コップをぐしゃりと潰し、ゴミ箱に投げ入れた。



「という訳なんだけど。大丈夫、スコール」
「ああ問題ない。資料ももうすぐまとめ終わる」
「そうじゃなくて、スコールが大丈夫なのかって訊いてるの。」

シュウの言葉にスコールは渡された書類から顔を上げた。何が?と言わんばかりの表情で。

「見るからに疲れている顔だ。」
「大丈夫さ。」
「そうは思えないな。精神的にもこたえる仕事なんだから、休息を疎かにしないで」
「そう言うシュウもいつもそんな調子じゃないか。息抜きするべきだぞ」

スコールが饒舌なのは、疲労や心のバランスの崩れを隠す為。普段から頻繁に接する者は、それをよくわかっている。
シュウは僅かに苦い表情をして、でもそれ以上追求するようなことはしなかった。

「そうね、私も気を付けよう。でもスコールもよ。そんなんじゃあ色男が台無し。」

スコールがサインした書類を受け取り、シュウは部屋を出て行った。それを見送り、スコールは椅子の背もたれに上半身を預けて眉間に皺を寄せ目を閉じる。
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