小説執筆

□ゲシュタルト
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好き、旦那のことが

好き 好き 好き すき すき

「って、同じこと言ってると訳わかんなくなるけどさ」
「なら言うのをやめたらどうだ」

溜め息の次にパタンと本を閉じる音が聞こえて、チェスターはニマリと満足げに笑う。
視界の端でそれを察したクラースは、読書という至福の行為を邪魔されたのにも関わらず、呆れたような照れたような顔をするばかりだ。

「何の話をしにきたんだ」
「んふっふっ」
「気持ち悪」
「ヒドい!」
「見事な百面相だな」

クラースも不本意ながら自分が表情豊かな人間だと認めているが、チェスターは更に上をいく。
なので、180度違う感情をそのまま顔に出せるのは一種の才能ではないかと密かに思っていたりする。

「でな、」
「そうだな。本題に入ろう」

一変した表情を見て、やはり一種の才能なのではとクラースは思う。

「言葉ってさ、繰り返せば繰り返すほど訳わかんなくなるだろ」
「ああ」
「気持ちもさ、ずっと同じこと想ってたらさ、あれ?何で俺こう思うんだろう?ってなること有るじゃん。理由はわかってるのに感情が理解できない感じ。」

チェスターの表情がコロコロと変わる。
そして、

「それで今日気付いたんだよ。俺、訳がわからなくなるくらい旦那のこと好きなんだ。凄くね?」

彼は突然、爆弾を投下した。
相槌を打つクラースの、冷静という意味を表すような顔を正に180度違う表情に差し替えることができるのも、才能と言えるのではないか。

「は、」

一寸おいて音がしそうな勢いで赤くなったクラースの顔を見て、チェスターはまたニマリと笑い言い放った。

「ゲシュタルトが崩壊したってそれが何だ」

コロコロと変わるチェスターの表情からは、それとは逆に想いが動くことはないのだということしか感じ取れない。

「気持ちは本物なんだからいくらだって言ってやるさ!」

旦那のことが好き!
本日の本題はこれである。

*

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