小説執筆

□決まり事
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「誕生日当日に本人が居ないっつーのもなぁ?」

12月22日。
一緒に昼食をとろうと誘ってきたゼルと、途中で偶然鉢合わせたアーヴァイン、そして俺。
有りそうで無い組み合わせだと思っていたら、ゼルがそんなことを言い出した。

「何とかならなかったの?スコール。」
「そんなこと言われても。」

そんなこと言い出したら、祝いたがってたセルフィも居ないのだから。
この職業に安寧などない、としか言えない。
と言ったら、またゼルが「でもなあ」とぶう垂れた。

「プレゼント用意してやったのに」
「僕と合同で、でしょ?それに用意は毎年してるじゃない」
「でも年に1回だぞ、年に1回!」

たしかに、と思いながらコーヒーを飲んでいると、ゼルとアーヴァインが同時にこっちを見た。
目線で何だ、と問うと今度は2人が顔を見合わせる。

「スコールも、用意してるでしょ?プレゼント。」
「前々日にいきなり入った仕事だもんな」
「まぁ、そりゃあ用意はしてるさ」

というか、今から用意すると言うか。

「だろ?1日ずれるって、なんかこうさー」
「もったいないよねー」

「なら、俺が預かるか?お前達のプレゼント。」

なんとなくそう言って、テーブルに置いたコーヒーから視線を戻すと、

「どういう意味?」

と雄弁に語る目線を浴びていた。
また言葉が足らなかったのか?俺。

「なるべく早く渡したいだろ?」
「うん、まぁそれは…」
「俺経由で良いなら、預かるが。」

2人ともクエスチョンを飛ばしている。
これ以上どう説明したらいいやら。
ふとアーヴァインが、何かに気付いた顔をした。

「ううん、やっぱり自分の手で渡すのが一番だし。水さすの嫌だし、良いよ」

何に水をさすのかと言わないあたりがアーヴァインだな、と思うと同時に、何もわかってないという顔をしてるあたりがゼルだな、と思った。
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