小説執筆
□そらのいろ
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珍しく本を読む気になれず、テントの近くの草原に横になってみた。
町から遠いこの場所は人工物は一つもなくて、視界に映るのは見事に空だけだった。
周りの木々も今や音しか存在を確認出来ないほどに、スカイブルーに埋め尽くされる視界。
あまりに広いそれに、不安になって目を閉じた。
あまりに小さな自分や文明が、いつか消えるときがくる気がして。
「旦那?寝てんのか?」
突然降ってきた声に、内心ビクつく。
普段なら聞き取れる足音は、周りの木々のざわめきに溶け込んでいたのだろうか。
やはり、人間は、小さい。
また不安になる。
でも今度は、目を開けた。
「なんだ起きてた。」
にま、と笑うそいつの髪と目は、空にも負けないスカイブルーだった。
「…はは」
「なに、何で笑った?」
「いいや何でも」
人間とは、小さいものだ。
空と同じ色をしているのに。
不思議なことに、お前の色は私を心底安心させてくれるよ。
なんて、言いたくなかったからもう一度目を閉じた。
チェスターも、隣に寝ころんだ気配がした。
今はただ広いこの世界が、優越感をくれた。
同時に、失うときへの虚無感も、くれた。
*