小説執筆

□脳の謎
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G.F.の影響で記憶が抜けていくことは理解した。
無秩序に蝕まれる記憶に気付くことすら出来ないことも。

知らないうちに忘れて
忘れたことも知らない。

「大切なことも忘れてしまった」

事実、俺はイデアが育ての親だということも、仲間達(で良いのだろうか)が幼なじみだったということも忘れていた。

(でも思い出せたじゃねえか)

あんたはそう言ったけど、アーヴァインが居なければ忘れたままだった。
そのアーヴァインも今やG.F.をジャンクションしている。
他の皆も、もちろん俺も。

皆が忘れてしまったら、抜けたものを思い出すことなど出来ない。
消えた記憶の分の隙間にさえ気付けないのだから。

(別に良いんじゃねえの)

どうしてあんたはそうなんだ。
俺達は正直いつ居なくなってもおかしくない。
それを受け入れているからこそ
居なくなった奴を忘れたくなんかない。
消える記憶は選べない。
かつて生きていた人の存在が消えていく。

「…それにさえ気付けないのだから、」

俺は未来がとても怖いよ。

(なら、ジャンクションをやめたら良い)

それが出来たらこんなに悩んでない。
俺は、強くなければいけないんだ。

(なら、自分から捨てろ)

でも俺はまだ弱いんだ。
無くなってしまう現実を知ってしまった今、それを無視できるほど強くないんだ。

(わがままな奴だな)

わかってる。
だってそうだろう。

強くなければあんたとは居られない
でもあんたと一緒に居た日が消えていく
それに気付くことも出来なければ阻止する事も出来ない
なのに、まだ俺は弱いから力を借りなきゃ立っていられないんだ

(じゃあさっさと強くなれ)

俺だってさっさと強くなりたい

(じゃあお前が1人で立てるまで俺様が付き合ってやるよ)

弱い奴は嫌いなくせに

(お前が満足できるくらい強くなるまで俺が生きてりゃいいだけの話だろ)

心配しなくてもあんたはしぶとく長生きするだろうな

(じゃあ何も問題ねえじゃん。)

…ちくしょう。
どうしてあんたはそうなんだ。

いつも勝手に泥沼にはまる俺を口先だけで引きずりあげやがって。

(忠犬ですから)

うるさい。


(お前が忘れても俺がずっと覚えててやるから)

(安心して強くなれ。)

(いつか俺が ぬ日までに。)



*

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