小説執筆

□裏切り
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どうしてすぐ見切るんだ。
あいつがこんな終わり方をするわけがない。
そんな信頼が有った。
でも今有るのはそれを裏切る情報だけ。
何よりも皆の空気が俺の信頼を裏切っていた。

過去形になったら誰も居なくなる。

その事実が、辛かった。

「死ぬ前に死ぬ気で周りにしがみつけばいいのにあいつが拒むから何も出来ない…」

ふと、最初の論点からずれてるな、なんて思ったけど。
リノアが優しい顔をしていたから、これで合っていたんだと思う。

「ほらね。大好きじゃない」
「……リノア」
「良いんだよ、スコール。それで良いの」

うなだれていたら、リノアが抱き締めてくれた。
お姉ちゃんを思い出して、少し泣きそうになった。

「スコールがしようとしていることは、いろんな国のいろんな人を裏切るかもしれない。もしかしたら、私のことも皆のことも裏切ってしまうかも。」

言う間ずっと、彼女の小さい手は子供をあやすように俺の背中を撫でている。

「でもねスコール。そういう時は、自分の心を裏切らない方法をとればいいの。他人なんてどうでもいいんだよ。そういうの、得意でしょ?」

そう言って離れたリノアは、優しい顔で笑いながら、まっすぐ俺を見ていた。

「スコールがしたいと思った事だもん、理解してくれるよ。」
「…俺は、1人で行きたい」
「うん」
「きっと皆が一緒に行きたいと思ってるかもしれないけど、皆で迎えに行ったら、サイファーは姿を現さない気がする。」
「ふふ、あいつは多分そうするね」
「だから、1人で…迎えに行きたい。」

霧が晴れたようだ。
なんだか頭がスッキリして、リノアは満足そうに笑っている。

「…何となく、居場所わかってるんでしょ?」
「うん」
「引き摺ってでも、気絶させてでも連れてくるんだよ!みーんな、一回くらい殴りたいんだから!」
「……うん」
「…あたしはスコールをとられた分、当たり散らしてやるからね。」
「…俺も気が済むまで痛めつけてやりたい」
「ふふふ、いってらっしゃい!」

自分を裏切らない方法。
リノアは皆を裏切るかもって言っていたけど。
なんだか、それが一番皆を裏切らない方法な気がした。

とりあえず、相当痛めつけられることになってるそうだから、
今以上の覚悟をしておけよサイファー。

ふん、と鼻で笑って、俺は石の家へ向かった。

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