小説執筆
□カワイイと言うのは
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「如何なものかと」
宿の部屋で休めるのは、はて何日ぶりか。
クレスは昼寝、クラースは読書、チェスターはクラースを眺め、のんびりとしていたその時。
ふいに本から顔を上げたクラースが呟いた。
「何が?」
「カワイイという言葉が褒め言葉だと言うことが」
いきなり訳が分からない、わけでもない。
チェスターはふと思考を巡らせて、
「俺にとって事実だからさぁ」
よく、クラースを対象にカワイイと口走ってしまうのは自覚しているからこそ。
褒め言葉だと本気で思っているのだから仕方ない。
そう言わんばかりにチェスターはヘラと笑った。
「男だぞ。29歳の。ついでにお前よりガタイも良いし。」
「気にしてんだから最後のは言うなよー」
チェスターは腰掛けていたベッドから立ち上がり窓辺の椅子に座るクラースに近付く。
「旦那。」
「何だ」
そしてチェスターは真顔で言う。
「人間ってな、好きって感情がでかくなりすぎる程、それをカワイイって思うんだとさ。」
「へえ?」
「カワイイな、旦那は。」
褒め言葉とか褒め言葉じゃないとか、最初からソコではなかった。
「なんて遠回しな告白だ…」
*