小説執筆
□極めて曖昧な確率だけど
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なんとなく。
気付いてはいる。
「もし、自分が本気で好きになった奴が、想いを伝えて成功する確率が0%の奴だったら、どうする。」
「…恋愛相談する時は前置きしてよ」
目の前のピンク頭はいつもの顔で俺が吐き出した言葉の意味を理解した上で次は訝しげな顔をした。
「そういうのに確かな確率なんて無いんじゃない?時と場合で違うんだし。」
「どう考えても無いんだよ」
「あたしは、金持ちと一般人だとか、相手に恋人がいるとかでも、成功0%は有り得ないと思うけど」
同性でもね、と言われた瞬間ドキリとしたが、そこには触れないつもりなので、顔には出さないようにと気を引き締める。
「そうか?」
「そうよ。告られたから気になる、なんてのもよくある話だし、言ってみるだけで価値はあんの。」
「ふーん…」
本当に?
確かに告白されたら嬉しい。
気になって好きになることもあるとは思う。
でもそれは主に異性の場合であって、そういう気のある人じゃないと同性なんて受け付けないんじゃないのか、とも思う。
「クラースは少なくとも完全拒否は無いわよ、ああ見えて柔軟で優しいから」
「じゃなきゃ精霊なんて信じないだろうしなぁ」
「そうそう。」
「だよなぁ………?」
あれ、今なんか。
のせられた、いや、話にのってしまった?
「やっぱりクラースなんだ」
ニヤリと笑うピンク頭。
必死に保ったポーカーフェイスが、いとも簡単に崩れた。
「なんで」
「あんたわかりやすいし」
バカな。
細心の注意は払ってたはずだろう?
わかりやすい、なんて。
「言ってみたら?あくまで軽く、さらっと。あっちが気にしたら儲けもんだし、脈ありならわかるし」
「いやそんな簡単な話じゃ」
「あ、丁度良くクラースが。おーい!」
「!」
待て。待て待て待て。
俺は承諾していないぞ!
「なんだ?」
「呼んでみたの」
「お前…用もないのに」
「いーじゃない、あたしクラース好きだもん。ね?」
話を振るな、俺に。ニヤついた顔で見るな。
ああ、もう。
「俺も、あんた好きだよ。凄く。」
告ってしまえ。
「…な、んだ、2人して。用がないならもう行くぞ?」
「どーぞ」
「おう。」
そういえば、今日になってから初めて喋ったかも。心臓に悪すぎるわ。
「ちょっと、見た?」
でも。
「脈あり、でしょ。」
少し驚いて、照れたような困ったような顔をした彼。
「…今度じゃれつきついでに抱きついてやろうかな」
予想外の大収穫。
確率は0から未知数に跳ね上がった。
俺の明日は明るいかもしれない。