小説執筆

□それは解答とは言わない
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日常生活の中で突然に、そういえばと疑問が浮かぶのは珍しいことではない。
それは主に自分で解決出来るものだったりするのだが、解決できず答えを得ないと無性に苛立ちや不快感を感じることになる。

そして今まさに突然浮かんだこの疑問は、確実に後者である。
何故こいつはあんなことしたんだろうか?
これの確かな答えをもつのは今目の前にいるサイファーだからだ。

他人の行動の真意なんてわからない。増して、あのサイファーだ。わかるわけがない。
かと言ってこのままでは気持ち悪いので、手っ取り早く訊いてしまおうと思ったのだが。


「SEEDは」
「あ?」
「SEEDは何故と問うなかれ、は知ってるか」
「当たり前だろ」
「万年候補性なのに?」
「なんだ喧嘩売ってんのか、コラ」

訓練所行くかと言われても、俺としては喧嘩を売ったつもりはさらさらない。あんたが体動かしたいだけなんじゃないか。
しかしそんな言い合いは時間の無駄なので「違う」と返して、話を続ける。

「問うなかれと言われても、問うべきこともあると思わないか」
「お前、いつものことだが回りくどい。簡潔に言えよ」
「何で、額に傷をつけたんだ?」
「は?」

一生ものになった額の傷。
これはサイファーにもあるものだが(俺が無意識に同じようにしたらしい)、やり返す発端はサイファーがつくった。

「訓練という名目でやってたのに、こんな怪我負わせたら後々面倒だと思わなかったのか?」
「あぁ。たしかに面倒だったな、カドワキせんせーとキスティに大目玉だ」
「当然だろう。じゃない、何故だと言ってるんだ」

そういえば俺も盛大に斬ってやったのにカドワキ先生にもキスティにも呆れられるばかりで怒られなかったな。
日頃の行いか。
というかこいつ、保健室で休んでなかったな。
俺は少し気を失ってたのに、どういうことだ。

「何故ねぇ…俺は縄張り意識が強いからな。」
「縄張り?」
「そ、縄張り。」
「あんたはどこまでも野性的だな」
「うるせぇな。」

縄張りか。
…縄張りって、自分が占有する場所ってことだよな?

「どういう意味なんだ」
「他の奴らに縄張り荒らされたくねーんだよ。だから一番目につく場所に印を付けるんだ」
「いまいちわからない」
「まだわからなくて結構。しかし、お前も同じことしてくるとはなぁ。なかなか嬉しかったぜ?」
「あんたマゾだったのか」
「ちっげぇよ。まぁいいから、ガンブレ取りに行くぞ。すぐ訓練所な」

…言いたいことだけ行って去るあたり、やっぱりサイファーはサイファーだな。
結局、求めた答えは得られなかった。何が縄張りだ、犬嫌いのくせに。
縄張り、占有する場所、目につく印。よくわからない。
くそ、疑問の時点よりも余計モヤモヤする。
答えるどころか謎を投下しやがって。

こうなったら、今日はサイファーに意地でも勝って、本当の所を吐かせてやる。



結局、誤魔化しに誤魔化され、その答えを知るのは俺が不快感も苛立ちもすっかり忘れた頃だった。




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