小説執筆

□寝酒
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眠れない。

「………どうしようか…」

本でも読むか。
いや、私のことだ。没頭して朝日を拝むに違いない。
羊……を数えるのは既に試した。(1時間それでねばった。)
あとは…

「寝酒か」
「知ってるか、寝酒って実は逆効果らしいぜ」
「!!!」

突然会話が成り立って、驚きで体が跳ねた。
余計目が覚めてしまった。と声の主へ視線をやると、さして眠そうなわけでもないチェスターと目があった。

「お前、いつから起きてた」
「旦那がどうしようか、って呟いた時にはもう起きてた」
「……その時点で声をかけろ」
「その時点でも今でも大して変わんないだろ」

まぁその通りなんだが…ずっと見られていたのかと思うと居心地が悪い。

「寝れねーの?」
「わかりきったことを訊くな」
「ふぅん。じゃあさ、旦那」
「なんだ」
「添い寝でもしてやろうか。」
「あ?」

なんだ、起きているようでも夢の中に居るつもりなんだろうか。
それはそれで更にさっきの発言が問題になる気がしないでもないが
見たところ寝ぼけてはいないようだ。
いや、それもアレか…?

「人間の温かさってすげーんだぜ」
「はいはい」
「聞けよ」

あぁ、やっぱり意識はハッキリしてるらしい。

「ものは試し。それでもダメならまた苦しめばいい」
「サディストかお前」
「救いの手を差し伸べてる時点でサディストじゃないだろ。ほら早く、明日は早起きだぜ」
「………」

仕方なく。仕方なくだ。

決して、ちょっと人肌が恋しくなった訳じゃない。

「もしこれで眠れたら次はクレスにどう説明するかだな」
「あいつより早く起きる気はねーのな。」
「無理に決まってるだろ。今何時だと思って」

あぁ、ぬくい。
お互い背を向けているが、すぐ傍に人がいる。
安心感というか
なんというか
なんか
眠くなってきたかもしれない。

「ま、あれだ…クレスには」

こいつも眠りに片足突っ込んでるな。
声がふにゃふにゃしてるし。

「眠れなかった旦那が寝酒っつって泥酔して、なんやかんやでこうなったって言えば良い」

それ、全面的に私が呆れられるよな。

この反論は言えたんだか言えてなかったんだか
フェードアウトしていく意識では充分に確認出来なかった。




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