小説執筆

□壁
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目の前には高くて厚くてどこまでも此方側と彼方側を隔てる壁がある。


「俺も社交的なわけではないけど、アンタほど他人を拒否することもないな。スコール。」
「……それで?」
「アンタ今、九割くらい言葉端折っただろ」

でも多分、その壁はどこにでもあるようなコンクリートの壁だと思う。

「省略せずに言え」
「…それを今ここで俺に伝えたところで、どうなるって言うんだ。」
「さぁ。アンタはすぐ理由を求めるんだな」

簡単に切り崩せる。
こんな壁。

「結果の無い話はバッツなりティーダなり、あのへんとしてろよ」
「結果はある。」
「そうは思えないがな」
「だって始めの一歩がなきゃ何も変わらないだろう?」

でも多分、彼方側はとても臆病だから。
ゆっくり削っていくんだ。

「理由とか結果は、そのうちわかるさ…いや、わからなくていい」
「何なんだ、あんた…」
「この一歩の理由とか結果は、その時には無意味だ」
「わけがわからない。」
「その時に覚えてたら教えてやるよ」

削って削って壁が無くなった時、今踏み出した一歩が報われた時。

その時はこの小さな一歩が「当然」になってるはずだ。

その「当然」が理由で結果。
でも誰かが言ってた、誰かを助けるのに理由がいるか。

その通りだ、「当然」の行動に理由も何も無い。

だから、理由や結果は現れて消える。

「一生、わからないといいな。」
「は?」

そして、いつかの当然の日々に、こいつに一番近いのが俺だったらいいな。



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