短編集

□蒼天の下で
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「高杉っ!!高杉っ!!」


戦場で白い夜叉が紫の鬼を抱き締める。


鬼の左目からは止めどなく血が流れている。


夜叉は必死に鬼の左目を押さえ、どうにか出来ない物かと思案に暮れている。


夜叉が振り向く。


そうすれば、助けが来るかの様に。


長い髪を靡かせ戦友が駆け付けて来ると信じて。






しかし、夜叉が見た物は──


遠くの方に上がる無情の火の手だった。




寺が……!!アイツらが……!!


多量の出血によるショックで気を失った鬼を抱えひたすら走る、走る、走る──



「白夜叉だーっ!!」

「追えっ!追うんだっ!」

「高杉を本陣へ帰すなっ!」




そんな喧騒の中。
夜叉は一つの言葉を耳にする。


「もう鬼兵隊は高杉“だけ”だっ!!怯むなっ!!」


「!!」


鬼兵隊が……鬼兵隊が殺られたのか?


呆然とした夜叉だが、歩は止めない。


コイツの鬼兵隊なら大丈夫。いくら天人と言えども……な。





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