Short Story

□シアワセ温度
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まどろみに身を任せたくなるような昼下がり
柔らかく差し込む陽射しはどこまでも優しく暖かい

ひなたぼっこには打ってつけの日

屋上にある二つの影は仲睦まじさを表すかのように、時に重なり、時に触れ合う

体育の授業の喧騒が響き渡る中、此処だけが空間を切り取ったように穏やかな空気が流れている


「なぁ雲雀、今夜どうすんだよ?」

ともすれば眠ってしまいそうな意識を鼓舞してたたき起こし、同じく眠たげな雲雀を突いて尋ねる

「どうしようかな…獄寺の家で考える事にするよ」

くぁ、と大きな欠伸をして間延びした口調で告げた雲雀はそのまま俺を抱き寄せた

恥ずかしいやら嬉しいやらで頭がパンクしそうになる俺に微笑み掛ける雲雀は、何食わぬ顔で腕に力を込めた

「そうじ…してない、から…」
「今更何言ってるの、君がそうじしてないのはいつものこと」

ぎゅう、て思い切り抱きしめるから…抵抗なんて出来なくて
今はただ…温かいこいつの腕に収まってるのも悪くないと思った

「俺ハンバーグ食いたい、かも…」

おとなしくなった俺に満足したのか雲雀の機嫌は頗る良くて、さらさらと俺の髪を撫でる指が気持ちいい

「なら今日はハンバーグにしようか」
「おう、…俺雲雀のハンバーグ好きだぜ」


なんてことない日常
それがただ愛おしくて

お前とだからかも、なんて
柄にもないことをつい考える


「…平和、だね」
「…平和だな」


ぽつり、ぽつりと


「幸せなんだよね、きっと」
「幸せなんだろうな、多分」


零れ出る言葉が


「ねぇ獄寺、好きだよ」
「…俺も」


愛おしくて擽ったい


「好きって言ってよ」
「…やだ、勿体ない」


溢れる想いを


「勿体ないって…酷いね」
「希少価値下がっちまう」


言葉にするのは


「少しくらいいいじゃない」
「やだ、また今度な」


まだ少し緊張するけど


「今度、言ってくれるんだ?」
「…気が向いたら」


いつかきっと…


「いいよ、待っててあげる」
「あんがと」




こんな奴だから好き
また今度、なんて
確信も保証もない言葉を
軽々と口にして、
でもそれを信じられるから
だからコイツが好きなんだ


実感した昼下がり、触れ合うそこからじわじわと、シアワセ温度。
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