Short Story

□ Normal Day 〜sideH〜
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今日も今日とて晴れのち晴れ、陽の光が恨めしくなるほどの雲一つない快晴。

そんな日にわざわざ応接室に赴くなんて、君も相当の暇人なんだね。

僕は忙しいんだよ?君の相手をしてる間に溜まってしまった書類を片付けなきゃいけない。

半分は君のせいなのに、さっきからかわいい僕の恋人はずっとソファに寝転んで不機嫌そうにこっちを睨んでる。

突然やってきて、いつもは僕が構いに行くと逃げるくせに。


構わないと今度は不機嫌になっちゃって。…本当、ねこみたい。

そんなに睨まなくても…終わったら相手してあげるから。


だから、もう少し待ってて?


あ、ちょっとおとなしくなった…何考えてるんだろう?

眉寄せて、思い切りこっちを睨んで…何か思いついたのかな?ちょっとだけ楽しそうな顔。


百面相なんかしちゃって、かわいいんだから。

…どこか行くの?どうせ、草食動物同士で群れに行くんでしょ?


そんなことさせないよ。


あの子は僕の笑顔に弱いからね。…僕も隼人の笑顔に弱いからわかるんだ。

ほうけちゃって、かわいい…そこまで素直な反応されると遊んであげたくなる

…この子、マフィアだとかなんとか言ってる割にぼんやりしすぎ。


キスできる距離なのに固まったまま、なんて。かわいいけど心配になるよ。

「いつまで間抜け面してるつもり?」

覗き込んで、からかってあげたらビクッて肩震わせて驚いてる


ねぇ、マフィアってそれでやってけるの?

キョトン、てしたその顔が好き。

でもすぐに悪戯っ子の瞳に変わる…何企んでるの?


考えてたら、隼人の顔が近づいて来て


柔らかい唇が触れた。


それがキスだって気付くのに時間なんて掛からない。

隼人がキスしてくれるなんて…滅多にないから驚いたけど据え膳食わぬはなんとやらって言うしね


もう少し、彼からの珍しい贈り物を堪能してみようと思ったけど、すぐに離れて行った。

…残念。でも照れ屋だし、仕方ないかな。

下向いちゃったから顔は見えないけど、綺麗な銀糸から覗く耳が紅い。


どうせなら真っ赤になった顔も見たいけど

…そんな事よりも

普段は絶対してくれないキスを頼んだ訳でもないのに、してくれた事実が嬉しかった。


…もちろん言ってあげないけど。

「隼人って堪え性ないよね」

思わず零れる笑み。

からかってあげたら、力いっぱい否定してくる。…そんな否定されるとさすがに寂しいよ

「うっせー!だいたいお前が仕事ばっかしてるからっ…」

でも、その言い草じゃまるで仕事と俺、どっちが大事?って言ってるのと変わらないよ?


どうせ隼人は気付いてないんだろうけど。

「何、相手にされなくて寂しかった?」

「そんなんじゃねー!暇だっただけだっての馬鹿」

君が何を言っても同じこと。

君の憎まれ口がただの照れ隠しだって、知ってるからね。


そんな悪態でさえも愛しいんだよ。…僕も重症だね。

「へぇ、図星?…そんな真っ赤な顔で言っても説得力ないよ?」

「こっち見んッ…」


…ごめんね?でもあんまりかわいいから我慢できなくなっちゃった。

苦しいのかな?口、開いてるよ。僕にしたら好都合だけどね。

咥内を掻き乱してくと隼人の足からだんだん力が抜けていくのがわかった。
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