Short Story

□天からの授かり物
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ピピピ

明るい陽光とともに軽快なアラーム音が部屋中に鳴り響く

ピピピ

獄寺は欝陶しそうに表情を歪め、さながら音から逃れるように布団を頭からすっぽりと覆い被る

ピピピ
「……うっせー」
ピピ――ガシャンッ


寝ぼけ眼で振り上げた腕が目覚まし時計に当たり起床時間を告げていた時計が床に落ちる

衝撃で壊れてしまったのか、数秒前から音は止み再びまどろみ始めた獄寺の息遣いのみが日当たりの良い室内に静かに響く

数分経ち、夢うつつだった獄寺は気持ち良さそうに寝息を立てていた

―ガチャ
開けたドアの軽い音と共にひょっこりと顔を出した闇色の容姿
未だ夢の世界の住人であるかわいい恋人を目にして自然と緩む頬を抑えてゆっくりとベットへ向かう

「隼人、起きて」

肩を叩いたり身体を揺すったりしてみるのだけどなかなか強情、起きやしない

「…仕方ないね」

ゆっくりと布団を剥がし銀糸から覗く耳に息を吹き掛ける


今日も今日とて感度良好な彼は大袈裟なほど肩を震わせて重たい瞼を持ち上げる

「ッ…きょーや?」

「おはよう、隼人」

眠たそうに目を擦る姿は歳相応の幼さが滲み出ている

放っておくと再び眠ってしまいそうな彼の腕を掴み

額、瞼、鼻先、頬…そして最後に唇にキスを落とす
くすぐったそうに身じろぐ姿が可愛くてしかたがない

衝動に任せて腕の中に閉じ込めた隼人は寝起きだからか普段より暖かい

このまま抱きしめて二度寝しても良いのだけど…、それじゃあわざわざ起こしに来た意味がない

ギュッと少しだけ力を込めて、身体を離す

「…はよ」

寝ぼけ眼でそれだけ告げると次第に意識がはっきりしてきたのか何やら考え始める

…起きたと思ったら考え事?
僕を蔑ろにしないでよ

ふと、くいくいと控え目に服の裾を引っ張られる

仕方ないからそちらに目を遣る

――カツッ

僅かな歯の痛みとともに触れた唇
それはすぐに離れていってしまったけれど

代わりに熟れたトマトみたいな真っ赤な顔がはにかんだ笑みを浮かべてこちらを見る


「…Buon compleanno、恭弥」





来年も、再来年も……

10年後も20年後も…

ずっとずっとお前の誕生日、祝わせろよ?


fin.
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