novel

□home
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手荷物を持って、グレタは勢いよく馬車を飛び降りた。
留学に出て数ヶ月。
そろそろ親元が恋しい頃だ。
昨夜から今朝にかけて降った雪は深く、太陽の光できらめいている。

その光の中。
よく目を凝らしてみると、城へと続く道に点々と……少々不恰好な丸い何かが続いていた。

目にするのは初めてだが、ユーリに話して聞かせてもらったことがある。
二つに重ねられた丸い雪の塊がキラリと光を反射する。


「わーっ!雪だるまだーっ!!」


喜々として、グレタは白い塊に駆け寄った。
近づいて見てみると、丁度お腹の辺りにかなり癖のある文字が刻んである。

「……『お』…」
続く雪だるまにも、同じように刻まれた文字。

「…『か』…」
その次も、その次も…。

「『え』…『り』………きゃっ」
夢中で雪だるまを追いかけていたグレタが、フいに何かにぶつかって顔を上げた。


「お帰り、グレタ!」
「ユーリっ!!」

赤茶の髪をくしゃっと撫でて、冷えた小さな右手をギュッと握る。
隣に立つヴォルフも同じように頭を撫でて、左手をつないだ。

「では早速、グレタの帰省パーティーを始めましょうか」

両手をグレタの小さな肩に置いて、コンラッドが、ヴォルフが、ユーリが微笑む。

「うん!ただいまっ!!」

三人の顔をそれぞれ見上げて、グレタは満面の笑みで微笑んだ。



例えどれだけ離れていても、変わらず迎えてくれる人がいるから。


「ねえ、今度はベアトリスも連れてきていい?」
「勿論!」


だから、いつでも帰っておいで。
ここは変わらず、君のためのhomeだよ。


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