05/07の日記

16:40
乙霧レミの誕生日
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どうも、2年生になりました。
最近更新していなくて本当にごめんなさい。
実は、pixivにも小説(っぽいもの)をこっそり挙げているので見かけたら是非読んでやってください。



「受け取れ。」

そう言って、クリスはレミに袋を渡した。
これを見たレミは、自分の誕生日プレゼントであるとすぐに察した。
だが、その見た目はただのポリ袋でプレゼントと呼ぶには地味すぎる代物だった。
それでも何故プレゼントであるとわかったのかというと、彼の性格からである。
目の前の青年は社会生活とは程遠い存在である。当然、教養もないに等しい。
だからこそ、普段なら他人に物をあげるはずのない彼が自分に物をあげているということは、何か特別な事情があるときだとレミは認識していた。

「ありがとうございます・・・わざわざ祝ってもらえるなんて。」
「・・・そんなつもりはなかったがな」

おそらく、ラリー先生に言いつけられたのだろう。
彼はクリスが常人の生活になじめるように様々な努力をしてきている。このこともその一環だと思われる。

「一応言っておくが、お前の楽しめそうなヤツを選んでおいたからな」
「私の楽しめそうな・・・?」
「ま、家帰ってからじっくり見とけ。そんじゃ」

ぶらぶらと手を振りながら、クリスは去って行った。

その後、帰宅したレミは袋からさっそく中身を取り出した。
入っていたのはCD。ただ、曲名やアーティストはレミの知らないものだった。
彼女はさっそく、家の音楽プレイヤーで曲を聞いて見た。
―最初に聞こえてきたのは、やけに重たいギターの音。

(・・・ああ、よりによって私の苦手な種類の音楽を・・・)

レミは軽い頭痛を覚えた。正直に言って、身体も精神も弱ってくる。
ふたを開けてみれば、クリスのプレゼントは彼の大好きなデスメタルのCDだった。
ただ、クリスが好きでもレミはお世辞にもこういうたぐいの音楽は好きにはなれなかった。
身体に悪そうな楽器の轟音、美しさとは無縁の野太い歌声、ついていこうにもいきづらい早いテンポ・・・すべてが苦手だ。
しかし何故、クリスは自分にこれをプレゼントしたのか?
もしかして嫌われてしまっているから?と一瞬思ってしまったが、少し錯綜するうちにある考えが頭に思い浮かぶ。

(もしかして・・・私が音楽が好きだから、こういう物を・・・?)

確かにレミは音楽をこよなく愛している。が、どんな曲でもいいわけではない。
もう少し選曲を考えてほしかった・・・というのはちょっと贅沢だろうか、とレミは一人思いにふける。
しかし、それでもクリスの気遣いを嬉しく思う。自分が好きなものを覚えていてくれたからだ。
そんなことを考えているだけでも、普段なら苦痛になってくるこの曲が少しだけ心地よく思えてくる。
彼女はふと、あることを思い出した。自分の誕生日に続いて、明日はクリスの誕生日なのだ。
普段は彼の誕生日を祝ってはいなかったのだが、今年は彼に何かお返しをしたいとレミは決意する。

(ですが、本当の音楽がどういうものなのかは少しは教えないといけないようですね)

クリスが好まないであろう、自分の大好きなクラシック音楽のCDを送ろう。
果たして、彼はどんな反応をしてくれるのだろうか。考えているだけでも何だか楽しくなってきて、レミはくすくすっと軽く笑った。

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