何か小説とか

□無法地帯
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よく晴れた秋の空。
空気は冷えているのに、日差しのおかげでそう寒いとは感じない。むしろ気持ちがいいくらいだ。


「今日みたいな日はここにかぎるよなー」

「ふん、貴様はいつもここに居るではないか」


まあまあそういわずに、と笑う元親は元就の弁当に箸をつっこむ。
その手を元就はパシンと落とし、自分のを食えと睨みをきかせてくる。


「で、なんで弁当持ってきたんだよ」

「どうせ貴様のことだ、言っても帰らんだろう」


当然のことのように元就は玉子焼きを咀嚼しながら言ってのける。本日の元親の自信作である。


「判ってんじゃん、流石ー。でも先公は気付いてんじゃね?」

「織田はもう諦めておるわ」


平然と弁当を抱えて出て行く学級委員を睨むだけで送り出した日本史教師には流石というしかない。
そのような行為をした元就もすごいが。

ふぅ、と箸を置き息を吐けば空を見上げた顔が太陽をとらえる。秋に似合ったどこまでも澄んだ空気。


「寒ぃ、元就」


ひゅうと風が吹けば学ランを教室に忘れてきた体には寒さしか来ない。
擦り寄っていく元親に溜め息をつきながらも、元就は何も言わずにそれを受け止める。

つれないながらも、こういうとこがあるから可愛いな、と思ってしまう。もちろん、本人に言ったらどうなるか判らないので言わないが。


「玉子焼き、うまかったろ」

「さぁな」


遠くの方で、四時限を終えるチャイムが聞こえる。

秋の空の下、無法地帯。



Fin.
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