図書館戦争短編小説

□桜
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―千葉県某駐屯地―



鉄心は疲れた身体を引きずりながら、庭のベンチへとたどり着いた。



「ああー。クソ疲れた」



鉄心は柄にもなくそんなことを呟いた。今日の訓練は一段とキツかった。きつかったからこそ調子に乗って、大野相手に百本組手を挑んでしまった。このあとは、飯食って自手練して、風呂入って寝るだけ・・。そんなことを思っていると首元になにか落ちてきたような感じがした。何かと思い首筋に落ちてきたものをみた。



「・・・桜?」



薄いピンク色をした花びらを左手の親指と人差し指で掴み、全体を眺めた。そして、振ってきた上空を見た。



「・・・すげぇ」



正直にそう思った。目の前には一面の薄い、いや、ここまで固まれば立派なピンク色だ。鉄心はそう思いながら、目の前に広がる桜を眺めた。そして、心なしになにか良くわからない感情が出てきた。



―誰かに似てる。



―団長?いや、絶対に違う。幸田か?・・・似てるけど違う・・・つか、なんで男が出てきたんだ?。



そんな突込みを自分にしながら、鉄心はさらに考えた。そして浮かんできたのは、



「笠原・・・郁」



この前騒動を起こしたとき初めて会って恋をした。いわゆる一目惚れだ。あれ以来、笠原以外の女性に興味がなくなった。なにかとあれば笠原が浮き上がってきた。



―あの笑顔、満開したような笑顔が忘れられないんだろうな。



そんなことを思っていた。しかし、途中でハッ、とした。おそらく今、顔は真っ赤になっているだろう。



―何を考えているのやら。



鉄心は頭を振り立ち上がった。そして、心の中で。



―また会いたい。



とも思っていた。





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