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□故意に愛す
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自然に愛すること、実はこれが一番難しい。

当たり前に出来ていることが、何かの拍子に出来なくなったとき。それを取り戻すのはとても難しいことになる。
たとえば欠けたお茶碗。たとえば濁った水。たとえば、





私は何も気付かずに「家族として」彼を愛していた。極自然に。
けれども、どこでスイッチが入ったのだろう、彼を「一人の異性として」好きになった。

その時から、私の苦悩は始まった。



昨日まで自然に愛せていた彼を、自然に愛せなくなった。頭の先から足の末端まで、彼に愛されなければと思った。頭の先から足の先端まで、彼を愛するために使わなくてはと思った。

なんにも特別がなくても、私達は愛し合っていたのに。

一挙一動は彼に愛されるために。
全身全霊は彼を愛すために。


自然に「愛せる」ように振る舞った。ふふ、変なの。「振る舞っ」ている時点で自然ではあり得ないのに。







そうして今日も、私は彼を故意に愛す。

延びてきた手を払うことなく受け入れ、その肌を慈しむように撫で返す。

「シャワー、浴びてこいよ」

金糸の髪に落とされたキスに、急かされた。

「うん」



(恋に恋して、故意に愛して)




■あとがきと言う名の言い訳

無理して背伸びする二人!みたいな!
いやいやっ違いますアレですよ、ほら単にシャワー先に入ってもらえないとつっかえちゃうからね!早く寝ようみたいな!←何故キスしたし

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