宝玉
□麻緒様<小説>
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兄の陰謀
一月五日。
三が日も終わり社会人が仕事を始めるこの日。
アンナと葉は遅めの初詣でに来ていた。
「う〜ん、アンナ、オイラやっぱり初詣では元日に行くもんだと思うんよ。」
という葉の抗議に、
「人込みは嫌よ。」
とあっさりと返した。
「ふふふ、やっと来たね、二人とも。」
仲良く歩く葉とアンナを、草影から見つめる影。
それは葉の双子の兄、ハオであった。
「待っていたんだよ、葉、アン…ふぁ、ふぁ、はっくしゅん!」
シリアスに決めようとしていたハオだったが、自身の特大のくしゃみがそれを邪魔した。
「ハオ様、風邪?」
ハオの隣りに座るオパチョが聞いた。
「あぁ、そうみたいだよ、オパチョ。でも、心配することないからね。さて…。」
優しく言った後、ハオの顔つきが変わった。
「葉、アンナ、君達の幸せも今日で終わりだよ。」
「アンナ、おみくじ引こうぜぇ。」
簡単にお参りを済ませた後、葉が隣りに置いてあったおみくじを見つけて言った。
「仕方ないわね、あんたが払うのよ。」
「おう。」
おみくじの前で財布を探る葉から見えないところにハオがいた。
「まずはこれだ。(以下:ハオ回想)
まず葉がおみくじを引く。
『おぉ、大吉なんよ。』
それは僕が仕掛けて置く。
次にアンナが引く。
『大凶だわ。』
これも僕が仕掛けておく。
『そりゃいけんなぁ、木に結んどきゃ大丈夫なんよ。』
『なによ人ごとだと思って、あんたに大凶引いたあたしの気持ちなんて分かんないわ。』
と、こう喧嘩にする。
名付けて『おみくじで大凶引いたあなたの気持ちが分からない作戦!』」
「ハオ様すごい。」
きっとオパチョ以外にすごいと言われないであろう作戦(作戦名を含む)を彼は本気で実行する気でいる。
「来たぞ。」
おみくじに手を伸ばす葉を見てハオは期待に胸踊らせた。
が、
「ちょっと待ちなさいよ、葉。私が先に引くわ。」
「ん、そうか。」
「なにー!?」
思わず声を出してしまい慌てて逃げ出すハオ。
「?今何か聞こえなかった?」
「いや〜、聞きまちがいじゃないか?」
こうして葉とアンナは仲良く大吉を引き当てた。
「そんな、完璧な作戦だったのに…?」
ハオの大いなる勘違いであった。
「お、梅茶あるぞ、アンナ。」
「そうね、いただこうかしら。」
「やっぱり飲むんだね。次の作戦だよ。(以下:ハオ回想)
まず葉がお茶をとる。
次にアンナがお茶をとろうとする。
すると、お茶をこぼされてしまう。
『きゃっ、熱い。』
『大丈夫か?アンナ。とりあえず拭いとけ。』
『何よ人ごとだと思って、あんたにお茶をこぼされたあたしの気持ちなんて分かんないわ。』
とこう喧嘩にする。
名付けて『お茶をこぼされたあなたの気持ちが分からない作戦!』」
「ハオ様すごい。」
もちろん彼はこれも実行するつもりである。
にやつくハオの前で、葉がお茶に手を伸ばした。
その後、アンナも手を伸ばす。
「さあ、こぼせ!」
ハオはまた期待に胸踊らせた。
が、
「さみー、俺にもくれ。って、あぢー!!!」
横から入って来たホロホロにお茶がかかってしまった。
「ホロホロ!大丈夫か?」
「ばかね。」
こうして騒ぐホロホロの隣りで葉とアンナは仲良くお茶を飲んだ。