宝玉

□麻緒様<小説>
1ページ/3ページ

兄の陰謀


一月五日。

三が日も終わり社会人が仕事を始めるこの日。

アンナと葉は遅めの初詣でに来ていた。

「う〜ん、アンナ、オイラやっぱり初詣では元日に行くもんだと思うんよ。」

という葉の抗議に、

「人込みは嫌よ。」

とあっさりと返した。



「ふふふ、やっと来たね、二人とも。」

仲良く歩く葉とアンナを、草影から見つめる影。

それは葉の双子の兄、ハオであった。

「待っていたんだよ、葉、アン…ふぁ、ふぁ、はっくしゅん!」

シリアスに決めようとしていたハオだったが、自身の特大のくしゃみがそれを邪魔した。

「ハオ様、風邪?」

ハオの隣りに座るオパチョが聞いた。

「あぁ、そうみたいだよ、オパチョ。でも、心配することないからね。さて…。」

優しく言った後、ハオの顔つきが変わった。

「葉、アンナ、君達の幸せも今日で終わりだよ。」



「アンナ、おみくじ引こうぜぇ。」

簡単にお参りを済ませた後、葉が隣りに置いてあったおみくじを見つけて言った。

「仕方ないわね、あんたが払うのよ。」

「おう。」

おみくじの前で財布を探る葉から見えないところにハオがいた。

「まずはこれだ。(以下:ハオ回想)

まず葉がおみくじを引く。

『おぉ、大吉なんよ。』

それは僕が仕掛けて置く。

次にアンナが引く。

『大凶だわ。』

これも僕が仕掛けておく。

『そりゃいけんなぁ、木に結んどきゃ大丈夫なんよ。』

『なによ人ごとだと思って、あんたに大凶引いたあたしの気持ちなんて分かんないわ。』

と、こう喧嘩にする。

名付けて『おみくじで大凶引いたあなたの気持ちが分からない作戦!』」

「ハオ様すごい。」

きっとオパチョ以外にすごいと言われないであろう作戦(作戦名を含む)を彼は本気で実行する気でいる。

「来たぞ。」

おみくじに手を伸ばす葉を見てハオは期待に胸踊らせた。

が、

「ちょっと待ちなさいよ、葉。私が先に引くわ。」

「ん、そうか。」

「なにー!?」

思わず声を出してしまい慌てて逃げ出すハオ。

「?今何か聞こえなかった?」

「いや〜、聞きまちがいじゃないか?」

こうして葉とアンナは仲良く大吉を引き当てた。



「そんな、完璧な作戦だったのに…?」

ハオの大いなる勘違いであった。



「お、梅茶あるぞ、アンナ。」

「そうね、いただこうかしら。」



「やっぱり飲むんだね。次の作戦だよ。(以下:ハオ回想)

まず葉がお茶をとる。

次にアンナがお茶をとろうとする。

すると、お茶をこぼされてしまう。

『きゃっ、熱い。』

『大丈夫か?アンナ。とりあえず拭いとけ。』

『何よ人ごとだと思って、あんたにお茶をこぼされたあたしの気持ちなんて分かんないわ。』

とこう喧嘩にする。

名付けて『お茶をこぼされたあなたの気持ちが分からない作戦!』」

「ハオ様すごい。」

もちろん彼はこれも実行するつもりである。

にやつくハオの前で、葉がお茶に手を伸ばした。

その後、アンナも手を伸ばす。

「さあ、こぼせ!」

ハオはまた期待に胸踊らせた。

が、

「さみー、俺にもくれ。って、あぢー!!!」

横から入って来たホロホロにお茶がかかってしまった。

「ホロホロ!大丈夫か?」

「ばかね。」

こうして騒ぐホロホロの隣りで葉とアンナは仲良くお茶を飲んだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ