いたいもうそう
□Chronicle
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「雲水。」
「あ、ぉ…ん…」
「起きろ。」
「ん…ぁ」
ドア一枚隔てた向こうからくぐもった音楽が聞こえる。
きっとその向こうでは、男女の区別も無くセックスに興じているのだろう。
阿含の腕の中にいる雲水は、力無く瞳を閉じたままだ。
「阿含くーん」
不意に、はっきりとした音が二人の耳に入る。
鉄製の大きな扉がギイ、と開いた。
派手な格好をした女二人が部屋ー阿含が寝床にしているーに入ってきた。
品定めをするように、雲水を睨む。
雲水の意識に二人はいない。
今、雲水の頭を支配するのは、阿含だった。
「あ゛?んだ、てめぇら。」
「何って、ひどーい!阿含君から誘ったくせに!!」
「知るかよ。」
阿含は、そう言いながら指を動かす。
女は簡単に阿含の指を飲み込んだ。
「あんっ、やぁーん…」
「んなユルマンで俺のチンコ入れろってか?バッカみて。」
「じゃあ、わたしは?」
阿含は雲水を片手で抱いたまま、女で遊ぶ。
女達は指だけで存分にイったらしい。
くったりしながら部屋から出て行った。
雲水は、感情のない瞳で阿含を見つめ、微笑んだ。
目の前に阿含がいることが嬉しい、とでも言うように。
雲水は、この場に来て理性を失った。
喋るということをしなくなった。
全てはあの夜から。
あの夜から、雲水の人生は狂ってしまったのだ。
生活を奪い
言葉を奪い
恋人を奪い
「あごん…」
呂律の回らない口を使うのは阿含にだけ。
その白い膚を阿含の為に紅く染める。
そう。
ここは“Chronicle”の集まる場所。
え、と。大変に分かりにくいです。
この時点で阿雲ですが、設定的には二人が双子だとはまだわかってません。
この後、後後後…くらいで詳しい経緯が判明する…はず…。