tactics
□そばにいるよ
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「は・る・かぁ〜!ねぇねぇ〜遊ぼ!!」
静かで平穏な昼下がり、一ノ宮家では暇を持て余した勘太郎の声が響き渡っていた。
「ねぇ〜春華ってばぁ、何時まで寝てるきぃ?」
昼の12時を過ぎても起きない春華に勘太郎は苛立ちを覚えた。
「むぅ〜もぅいいもん!!春華が遊んでくれないなら家出するぅ〜。」
流石に耳元で騒ぎ続けられ、起きないわけにはいかなくなり春華は上半身だけを起こした。
「やっと起きたぁ。」
春華はポリポリと頭を掻きながら嬉しそうにしている勘太郎を半眼で見た。
「…勘太郎。お前…何歳だ?」
「えっ!?・・いきなり何で?」
勘太郎は何故そんな事を聞かれたのかが本気で分からず、首をちょこんと傾げた。
「何で?じゃねぇよ…。ヒトが気持ち良く寝ていたと云うのに耳元でギャーギャー騒ぎやがって。挙句の果てが『家出する』だと?お前は子供か!?餓鬼か!?」
春華は一気に喋ると深い深い溜息を吐いた。
勘太郎は、春華に怒られた事が悲しく、それと同時にムカついて瞳に涙を溜め、今にも泣き出しそうだが其れを必死に堪えてる顔をしながら頬を膨らませた。
「だってぇ…折角二人で居られるのにっ…春華が全然起きてくれないし…。」
「だから、其れが子供だってんだ。もうちょっとしたら遊んでやるからそれまで一人で散歩なりなん…なり…っ!?」
――バンッ
勘太郎は思い切り春華に座布団を投げつけた。
「もういいもん!!春華は僕の事が嫌いなんだ!!!」
「おい、勘太・・ろ…。」
「良いもん良いもん!!本当に家出してやる!!…春華なんて…春華なんて…
大嫌いだ!!!」
そういうと勘太郎は泣きながら部屋を出て行った。
春華は暫く呆然としていたが、正気を取り戻すと急いで勘太郎の後を追いかけた。
だが、春華が部屋を出たときにはすでに玄関の戸が閉まる音が家中に轟いていた。