お題
□15.添い寝して!
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「…はりゅかしゃん。」
満月の出ている夜。先に寝ていたはずの勘太郎が俺の部屋に来た。
…何故か枕を抱き締め、涙眼で。
「‥どうした?」
「…うにゅ、っ…うぐっ…。」
「か、勘太郎?」
勘太郎は俺が声を掛けたらいきなり泣きだした…。
…俺なんかしたか?
どうしたらいいのか分からなくて、取り敢えず勘太郎の頭を撫でた。
すると勘太郎は徐々に泣き止んできた。
「‥どうしたんだ?」
優しく諭すように言うと、勘太郎は紅い眼をさらに紅く染め、たどたどしく話しだした。
「‥しくっ、っあにょね…ボクね…恐い夢みたの…。大きなね、わんこさんがね、ボクをね、追い掛けちぇきて…うぐっ…っ…。」
勘太郎はその‥『本人曰く恐い夢』を思い出した所為かまた泣きだした。
「あぁ〜泣くなって!此処にはわんこさん居ないだろ?だから、泣くなって!」
「…うぎゅ‥っ、ぅんっ…勘たんね、っすっぎょく恐きゃったの…しくっ…。」
俺は勘太郎を優しく抱き寄せ、頭を撫でてやった。
勘太郎は大の犬嫌いだから、例えそれが夢だったとしても本当に恐かったのだろう。
俺は勘太郎が落ち着くまでずっと抱き締め、頭を撫で続けた。
勘太郎も俺の背にその小さな手を回し、ギュッと寝巻を握り、俺の胸に顔を埋めて泣いた。
「…大丈夫だからな。お前をイジメるわんこさんが来たら俺が守ってやるから。」
「…ぅん。」
勘太郎は顔を埋めたまま、頭だけをコクンと動かした。
そして、ゆっくりと顔を上げ、俺をその綺麗な紅い瞳で見つめてきた。
俺は『どうした?』と言う意味を込め、頭を少し傾げた。
「…あにょね、はるかしゃんにお願いがあるんでしゅ…。」
勘太郎は恥ずかしそうに『一緒におねんねしていいでしゅか?』と言った。
俺は勘太郎に微笑みながら額に軽く口付けた。
勘太郎は大きな眼をパチクリさせ、頬を紅くした。
そんな勘太郎を俺は愛しく想った。
この小さく弱々しい背中を守りたいと想った。
それが例え『夢の中』だったとしても…。
例え夢の中でもコイツをイジメる奴は許さない。だから俺が守ってやる。
勘太郎が呼ぶならば何処へでも行ってやる。
例え地の果てだろうが…
それが夢の中だろうが…
必ず俺が守ってやる…
だから…
『俺がずっと添い寝しててやるよ。』
☆おわり☆