プチ連載
□Dear...sister〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
2ページ/10ページ
桜子には、全くと言っていいほど理解出来ない。
確かに恭弥は、何者にも捕われる事無く、自由気ままに、自由奔放に生きてきた。
だけど、その傍らには、常に桜子がいた。どんな時でも、恭弥の人生は桜子を中心に回っている。
自由奔放に生きているけどそれは、桜子を常にどう守ろうか考えながら生きていただけ。
大事な人を守り続けている恭弥の人生。一体、どこが恥なの?
ずっと、自分の傍らには恭弥がいた。どんな時だって、恭弥は自分を守って大切にして、愛してくれた。そんな人を、愛しく想わない訳がない。
恭弥を愛してる。
この気持ちは、もう誤魔化せない。抑えきれない。
ずっと、恭弥が傍にいた。
今更離れるなんて、出来る訳ない。これからだって、恭弥とずっと一緒にいる。
「好きな事してるのに代わりはないだろう。それに、桜子には家を継いでもらうんだからな!お前だけは、俺から離れるな!」
「無理だよ…」
もう、戻れない。
前の様な日常には、戻れない。
姉弟との未来を望んでいる訳じゃない。恋人として、生きていく事を望んでいるんだ。姉弟として、恭弥と一緒にいるという選択肢はない。
恭弥の気持ちを知って…。
自分と同じ気持ちだと知って…。
後戻りなんて、出来ない…。
泣きながら父親に告げる桜子に、雲雀は笑顔がこぼれそうになる。
だけど、今は笑っている場合じゃない。真剣に、未来を考えなくてはならない場合だ。
「桜…ッ!」
桜子に向って、歩き出す。
父親に聞かれたら、もう、後戻りは出来なくなる。全てが、手遅れになってしまう。
「私だって恭弥が…!!」
咄嗟に、雲雀は桜子の口を背後から塞いだ。
こんな奴に気持ちを打ち明けるんじゃなくて、面と向かって、桜子の口から、目を合わせて言ってほしい。
誰にも邪魔されずに、二人きりの時に聞きたい。
ずっと聞きたかった。
桜子のその言葉が、ずっと聞きたかった。まさか、聞ける日が来るなんて、思ってもいなかった。
かなりの驚きもあった。
だけど今は、嬉しさで胸が一杯で…。雲雀は、言葉が出ない。
「恭弥?」
唖然とする父親の目の前から、桜子を攫っていく。
早く二人きりになりたくて、桜子の腕を掴み、歩き出す。
あのまま家にいたら、父親が二人の邪魔をして煩いに決まってる。
叶わないと…。
姉弟だからと諦めていた恋が、まさか叶うなんて…。
どうしよう…。
嬉し過ぎて…。
どうしよう…?
* * *
桜子の手を引き、目的の場所に向って歩いていく最中、雲雀は口を開かなかった。
怒っているとも取れる態度だったけど、握っている手が暖かくて優しくて、怒っていないと言うのは解る。
せっかく、雲雀が気を遣わせてくれたのに、自ら父親から離れた。けど、桜子からしたら父親よりも、雲雀が大切だっただけの事。雲雀に取ったら嬉しい結果になっただけの話。
これで、力強くで桜子を攫って、傷付ける心配がなくなった。桜子なら、笑顔で着いてきてくれる。
「恭弥…何でここ?」
目的地に到着し、最初に声を上げたのは桜子だった。
見慣れた風景を目の前に、疑問を抱いた。
ここは生徒会室。どうして、生徒会室?
「僕と桜子が、これからも一緒にいる部屋だからね」
いつも、ここで他愛もない話をして、仕事の話もした。
そこのソファーで雲雀が居眠りして、使い勝手のいい机で桜子が仕事をして、雲雀の寝顔を盗み見したりして、二人で過ごしてきた。
けど、それは姉弟として過ごしてきた場所。これからは、恋人と過ごす場所として使いたいから、ここから、始めたかったんだ。
「恭弥はやっぱり…」
「ずっと、桜子が好きだったんだ。姉としてじゃなくて、一人の女の子として…」
手に入れたくて仕方なくて。
何度も、手を伸ばそうとした。
その度に、桜子がもう笑顔を浮かべてくれなくなる。そう思ったら、拳を握って、止めるしかなかった。
泣かせたくない。
悲しませたくない。
一番大切な子だから、手に入れられなかった。
手を伸ばすことを躊躇って迷って、結局は何も出来なかった。
でも…。
両想いだった。
それが嬉しくて、幸せで、笑顔が止まらない。
「言って?桜子も」
顔を真っ赤にしている桜子に、雲雀は優しく話し掛ける。
頬に手を添えて、手を握ったまま離さない。
照れながら、桜子は口を開く。そんな桜子の行動の一つ一つが可愛くて愛おしくて、手放せない。