プチ連載

□Dear...sister〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜
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いっその事…



攫って行って欲しい…。



何もかもを捨てて…。





Dear sister...
〜親愛なる君へ贈る永遠の歌〜






二人で、同じ家に帰る。
姉弟だから当たり前だけど、離れなくて済むのが嬉しくて、歩いている最中も、つい笑顔になる。
家じゃないから、手は繋がないけれど、他愛もない会話をして、時々雲雀が群れを咬み殺して帰ってく内に、あっと言う間に家に到着してしまった。
二人の、何気ない時間を楽しみたいけど、早く家に帰って二人だけの時間も楽しみたい。
昨日までとは違う。
ばっちりと意識してるから、もう弟としては見れない。いつもみたいにくっついていても、受け流すなんて出来る訳がない。ドキドキしちゃって、きっと上手く行かないだろうけれど、二人でいられる時間は大切にしたいから。
大切な人との時間。思う存分味わいたい。
桜子は、嬉しい気持ちを抑え切れずに、玄関を開けた。しかし、落胆する事になる。

「おかえり」

「お父さん…」

目の前にいる大人に、愕然とした。邪魔される。そう思ったら、鬱陶しくさえ感じてくる。
落胆する気持ちを隠しながら、桜子は雲雀に視線を向けようとする。だけど、目が合う以前に雲雀は自分の隣から居なくなり、父親の横を素通りしていってしまった。
話す事なんてない。会話なんて無意味。視線を合わす事すら煩わしくて、存在自体を無視する。

「恭弥」

呼び止めても、振り向いてすらくれない。桜子の呼び声に振り向かないのは、怒っているからじゃない。絶対に、桜子から引き剥がされるから。
ここで桜子を無理矢理連れ出したら、勿論、この人は確実に止めに入ってくる。けれどそんな事をされたら、何をするか解らない。桜子をも、傷付ける事になってしまうのだけは、避けたい。
桜子を大切に想っている。けれどそれは、自分だけじゃない。目の前にいた人も、桜子を大切に想っている。でもその人は、自分を鬱陶しく思っている。桜子に声を掛けたら、桜子も怒られる事になる。桜子は、何も悪くない。勝手に、好きになっただけ…。

報われない恋だって解っている。だけど、こんなにも愛しい人を自分だけのものに出来ない事に、苛々は募っていく一方。
雲雀が振り向いてくれない理由なんて解っている。解っているのに淋しくて、後を追い掛けたくなる。でも、父親が許す訳ない。

「桜子。まだあんなのと…」

「あんなのって…あなたの子供でしょう!!」

悔しくて、桜子はつい声を荒げた。雲雀の気遣いが無駄になる。解っているのに、恭弥が馬鹿にされるのだけは許せない。
桜子の声が聞こえて、雲雀は驚きを隠せなかった。
雲雀は、桜子の気持ちを知らない。自分が一方的に思っているだけと勘違いしている。
だから、桜子が父親に逆らうなんて、予想していなかったのだ。

「桜子…」

「自分の子供だからこそ恥なんだ!好きな事して勝手に暴れて…。そんな奴に、この家を継がせる訳には行かない!!」



もう…



我慢の限界!!



「散々放っておいて今更何!?それに、恭弥は恥じる事なんて何一つしてない!!」


何も解ってない!
恭弥の事、何一つ解ってない!
そんな奴に、親だと名乗る資格なんてない!名乗ってほしくない!

恭弥の素晴らしい所を、桜子は沢山知っているし、身に染みて解っている。
今まで、恭弥を放っておいて、愛情を教えなかったこいつに、恭弥の事を語る資格なんてない。自分の責任逃れの言い訳に、聞く耳なんて持たない。

父親を睨み、反抗的な態度を見せ付ける。そんな桜子に、父親は信じられない物を見る様な、悲しい目を向けている。
天真爛漫な桜子に、癒され続けてきた。そして、初めて出来た娘に反抗されて、傷付かない父親なんていない。ましてや、反抗しないと信じていた娘なら尚更…。

「れ、桜子までそんな…」

落胆している父親に、桜子は容赦なく言葉を浴びせる。
落ち込んでいる姿を見せても、情けなんてかけられない。許せる訳がない。最愛の人を罵って馬鹿にして、邪魔扱いをしたんだ。
掛け替えのない人を、傷付け続けた代償は、かなり重い。

「恭弥は、大事なものを守ってるだけ!!それのどこがいけないの!?」

恭弥を見ていなかったくせに、恭弥を恥だと思うなんて、どうかしてる。何を見て、恥だなんて思うのだろう…。
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